若き日の訓練1 | 探偵言いたい放題 パート2

若き日の訓練1

 思えば、私も一人前の探偵になるまでに、様々な訓練と経験を積み重ねてきたものだ。昔は、ハイテク機器といっても無線関係のものや小型カメラなど全てアナログが基本であった。今のデジタル時代の機器は、本当にたいしたもんだ。我々の調査領域をどんどん奪っていってしまうような気がしてならない…
 おっとっと・・・これじゃオヤジみたいだ。それでは、私の若き日の訓練の1コマをご紹介しよう!!
 あれは、私が探偵となってまだ数ヶ月の時であった。この私にもかつて偉大な師匠がいた。
 突き抜けるようなかん高い笑い声を発する元軍人の探偵"星 光"(ホシ ヒカル) 氏であった。
 引退するまでの間、数々の功績を残した名探偵であった。
 "TV局筆頭株主死因の究明""税務署の不正を暴き裁判で勝訴""不動産詐欺事件(数十億円)の真相解明"…と取り上げればきりがないほど数々の解決案件があり、優秀な刑事もちょくちょく顔を出し「光さん。良い情報はないですか…?」と情報を仕入れに来ていたものであった。
 実は、以前お話しした、キレ者刑事の警部補"村田"が若い駆け出しの頃、"光"の調査事務所に顔を出していたのであった。(後に、村田と話してそういえばあの時の…というのが最初の彼との出会いであった)
 そんな、師匠、"光"と私が2人で張り込みをした時であった。調査内容は、半導体関連のメーカー(1部上場企業)で技術開発部の社員Aの不正をチェックするための調査であった。
 2人で行ったこの日の主な調査は、社員Aの外出時の行動を監視するための尾行張込であった。
 この日の調査には、2つの意味がある調査であることが私には察知できた。
 1つは、当然、この調査を成功へと導くためであるが、2つ目の意味としては、まだ経験の浅い私の訓練及び技量の把握である。
 TOPである"光"自らが、現場におもむき、また、私へのテストとなると
 「絶対にミスは許されない。完璧にこなしてみせる」との思いで調査を行った。
 私が運転、"光"が助手席に乗り張込を開始した。
 ポカポカ陽気の張込であった。"光"の厳しい指示から始まり、張込の時間が経過していくにつれて"光"の口数が徐々に少なくなっていき、やがて沈黙となった。沈黙は数分間続いた。私は「きたきた。いよいよテストの開始だ」と思い、緊張しながら任務を遂行していた。張込を開始して1時間が経過したころであった。今だ社員Aの動きはない。すると、異変がおきた。


つづく