医療の用語で、「セカンドオピニオン」というのがあります。
セカンドオピニオンとは、患者が自分の病気について、今かかっている医師(主治医)以外の、別の医師に求める『第2の意見』のことです。
近年この考え方が広がってきた背景には、従来の、「先生にお任せ」型の医療ではなく、『インフォームド・コンセント』(説明と同意)によって自分も治療の決定に積極的に関わりたい、というニーズの高まりがあります。
医療の理論や技術は日進月歩で進化し、次々に新しい治療法が生まれており、その全てを一人の医師が把握しているとは限りません。
また、医師や医療機関によって、患者さんに提供すべきだと考える治療が異なる、といったこともあるでしょうし、患者さん自身も、それぞれ受けたい治療の内容や程度は様々だったりします。
現在の病院では希望する治療が受けられないので、もっと設備の整った病院へ移りたい、あるいは、単純に主治医と相性が合わない、というような場合もあるでしょう。
そうした場合に、患者さんと主治医との間で、最善と思える治療方法について合意した上で治療を行うために、別の医師の意見を聴いてみる、というのが、「セカンドオピニオン」の意義なのです。
セカンドオピニオンを受けることで、自分が選ぶ治療にどのようなメリット・デメリットがあるのかを多角的に知ることが出来、納得のいく治療が受けられる、というわけです。
このような、医師と患者さんとの関係性は、そのまま、乗馬クラブの経営者や指導者と、会員さんとの関係に置き換えて考えることが出来ます。
乗馬クラブでも、レッスンのレベルやジャンルによって『かかりつけ』の先生というのがだいたい固定されていたり、クラブの方針で指導の方法や文言が画一化されていたりして、会員さんが自分の『症状』に関する多様な見解に触れる機会というのは、そう多くはないのではないかと思います。
乗馬の技術や指導の方法の他、調教や装蹄、治療の理論にはじつに様々なものがあり、必要な知識も非常に広範囲にわたりますから、一人の指導者がそれらを網羅しようとしても限界がありますし、またクラブの経営者のこだわりによって、お客さんに提供したいと考えるレッスンとか調教の方針に偏りがあることも多いものです。
会員さんの方でも、受けたいレッスンの内容や程度は様々ですから、施設や馬の質によって希望するような指導が受けられないとか、単純に経営者や指導者と相性が合わない、というようなことは、病院などよりも多いでしょう。
そうした場合に、会員さんがただ不満を抱いて悶々としているだけではなく、自ら積極的に多様な知識を吸収し、自分や馬にとって最善と思える指導方を考え、納得した上でレッスンを受けることが出来るように、「かかりつけ」の先生とは別の『第二の意見』を聴いてみる、というのは、それなりに意義のあることではないかと思うのです。
そうした、いわば「乗馬のセカンドオピニオン」の例としては、ビジター騎乗の制度を利用した「出稽古」とか、このようなブログやSNSなどが考えられますが、それらによって、現在自分が不満や不信を抱いている指導方法にどのような目的や効果があるのか、といったことを多角的に知ることが出来れば、むしろそうした不満や不信の解消に繋がる可能性もあります。
近い将来、従来のような「先生にお任せ」「嫌なら辞めろ」型の乗馬レッスンではなく、
「セカンドオピニオン」指導者の見解も取り入れつつ、会員さん自身も自らへの指導方針の決定に関わるような『インフォームドコンセント』に基づいたレッスンを行うような乗馬クラブが一般的になっていく…というのが理想なのかもしれません。
しかしながら、医療の現場でもそうでしょうが、「先生」との関係が悪くなることを心配して不満や希望をなかなか言いだせなかったり、勇気をだして訴えても、二言目には「嫌なら他へ行けば?」などと居直られる、というようなことが今だに結構あるのがこの世界の現実であり、
そのようなクラブや指導者に対して不満を抱いた会員さんが自馬とともに他所へ移籍したとか、理想を抱いて自ら乗馬クラブを始めた、というような話を聞いたことがある方も少なくないでしょう。
そうしたところで指導を受けておられる場合には、「部外者」による別の見解を参考にしようとすることが、かえってモメごとの発端となってしまう可能性を心配されるのは仕方ないことだとは思いますが、
「他所でこういうことを聞いたんですけど」というような意見や疑問にも真摯に向き合い、そうしたことも参考にしながら、客観的かつ合理的な、会員さんや馬にとってベストな指導を目指してくれるような指導者やクラブも、きっとどこかに存在しているはずだと思います。
私がここで書いているような内容も、「絶対にこれが正しい」などと言うようなつもりは決してありませんが、おそらく一般的なクラブでの指導とは異なるものであることは少なくないかと思われますので(笑)、
あくまで「別の見解」の一つとして参考にして頂き、何らかの形でお役に立つことがありましたら幸いです。 (^^)
甲野善紀@shouseikan
世間では「基本が大事」という人ほど、それについて深く考えもせず、ただ、師匠や先輩から言われている事をオウムのように門人や後輩に言っている場合が殆どではないかと思います。
2017年06月03日 01:12
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