~ぶらぶら江戸散歩~vol.90『三社祭』 | 文化家ブログ 「轍(わだち)」

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江戸開府より約400年。東京下町には、江戸の息吹が今なお息づいております。
身近な江戸をぶらぶら散歩。新富に生まれた私、中西聡。
八丁堀・日本橋を中心に、江戸の町のちょっとした情報をお届けいたします。

今回お邪魔しましたのは、江戸の街に夏を告げるお祭り『三社祭』。
浅草の浅草神社で行われるお祭りです。
お祭りは3日間に渡り行われ、見物客は延べ150万人にも達すると言われます。
着物では、厳密には5月末までは裏地がついている袷。そして6月1日からは、その裏地がない単衣が衣替えと言われておりますが、気の早い江戸っ子は、この三社祭が終われば、夏。袷なんぞ着ていてはイキでは無いと言わんばかりに、夏物に衣替えをいたします。

それに加え、近年の異常気象。この季節、夏日のような気温にルールに縛られてなんか言われません。浴衣も着ている方も見かけます!!今回は、そんな『三社祭』にブラブラ出かけてみました。

まずは行き方。浅草には東京メトロ『銀座線』、都営『浅草線』、都バスに大川(隅田川)船(水上バス)など、さまざまな行き方はできますが、私のオススメは、浅草駅まで行かずに、東京メトロ『銀座線』のお隣の駅『田原町』で下車し、浅草めがけて歩くコース。
なぜか?と言われますと、『三社祭』は浅草の氏子44ヶ町が参加しての大きなお祭りですから、エリアが広範囲にわたっております!!
日本人だけではなく、外国からの観光客も押し寄せる『三社祭』。浅草のシンボル、雷門の前はたいへんな人だかりで、身動きが取れません。そのため、少し空いている『田原町』から進むコースがストレスがあまり無く、オススメなのです!!

さてさて、そもそも『三社祭』。なぜ?三社と言うのか?
耳慣れてはいても、その由来をご存知の方は意外と少ないのでは無いでしょうか。
まずは、その歴史をひも解いて参りたいと思います。

三社祭は、前述のとおり、そもそもが「浅草神社」の例大祭。
ちょっと脇道にそれてしまいますが、浅草は「浅草寺」が有名です。雷門から続く参道。そこにはたくさんの商店が所狭しと店を構えております。
明治時代に神仏分離令が出される前は、「浅草神社」と「浅草寺」は一緒になっていたのです。
では、その歴史に焦点を当ててみたいと思います。

今を遡ること、1400年。治天の君は女帝「推古天皇」の御世でした。
推古天皇と言えば、皆さまご存知の「聖徳太子」の叔母にして、聖徳太子を皇太子に据え、日本の律令制度を整えた天皇です。

そんな時代に、浅草の地に二人の漁師の兄弟がおりました。
兄の名は「檜前浜成」(ひのくまのはまなり)、弟の名は「檜前竹成」(ひのくまのたけなり)と言いました。
二人は漁に出ても、魚は獲れず、網を引き揚げると、いつもいつも、人型の像が網にかかったと言います。
その話を聞きつけました、地元の文化人がおりました。その人の名は、「土師真中知命」(はじのまつちのみこと)。
兄弟からその像を見せてもらった「土師真中知命」は、これは現世に出現した聖観世音菩薩であると兄弟に告げるのです。

そして、その像に豊漁を祈念し、二人は漁に出てみると何と!!大漁ではありませんか!!
その恩に報いるために、「土師真中知命」は、仏門に入り、庵を建てそこに、この像を安置したのが、「浅草寺」の起こりと伝えられます。

また、この奇跡を起こした「土師真中知命」(一之宮)、兄弟の「檜前浜成命」(二之宮)、「檜前竹成命」(三之宮)の三人を祭神として祀りましたのが、「浅草神社」なのです。
ようやく、謎解きの答えとなりますが、こうして「浅草神社」は三人の神を祀っておりますので、「三社」と呼ばれるようになり、その例大祭を「三社祭」と言われるようになりました。

昭和38年までは例祭は5月17日、18日と定められておりましたが、今はこの日程に一番近い、週末の金・土・日。
そこで、今年(平成28年)の三社祭は、5月13日(金)・14日(土)・15日(日)でした。

初日は、御神輿(おみこし)に祭神の三柱(3神)の御霊を移す、神霊入れのお祭り。
翌日のお祭り中日は、氏子各町のおみこし約100基が町中を練り歩くお祭り。そしてクライマックスの最終日は、本社(浅草神社)、一之宮・二之宮・三之宮が街を渡るお祭りです。

私がお邪魔した時(最終日の正午)は、まさに、本社の御神輿が、メインストリートの雷門通りのゴール地点に到着したタイミング。まずは露払いをするかのようにお囃子を乗せた山車(だし)が一足先に到着し、その後、「わっしょい わっしょい」の掛け声とともに、一之宮の御神輿が到着しました。
  
まずは到着を祝う一本締め。その後、氏子代表の方の挨拶の後、無事に今年もお渡りが出来たことをお祝いする三本締めが行われました。拍子木を打つ音がめでたさを増します。その昂揚感に背中を押されたかのように、観客もみんな一緒に三本締め。もちろん私も参加しました!!

三社祭は、町中あちこちで、各町の神輿が渡り、本当に浅草一色が『祭り』に包まれておりました。きっと、神様たちも喜んでいたに違いない!!と感じた次第です。
  
これからが、江戸の大きな夏祭りは本番を迎えます。山王祭りに、深川祭りなどなど。
ぜひ皆様も、機会ありましたら、江戸の夏祭りをお楽しみください!!

 


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