今日のアラビア語。◇文法編◇#20【所有格③人称代名詞の所有格、対格と注意点】 | 藤坂託実の、世界に幸Ale♪

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だいぶお待たせしました。今回、一番編集が大変な記事だったかも…。


さて、所有格の続きですが、これを忘れちゃいけませんね。人称代名詞です。
英語でも、学校の授業でさんざん「I-my-me」「you-your-you」「he-his-him」……とやってきた方がほとんどでしょう。アラビア語でもやりましょう!(笑)

とはいえ、Iやheやtheyにあたる「主格」は既に#11で紹介したので、今回は「後日に。」としていた所有格、対格を紹介します。

一覧を示す前に、まずはアラビア語の人称代名詞(所有格、対格)の特徴を箇条書きで。

<1>所有格と対格は同じ語。
  (1人称単数「私の/私を」を除く)

<2>直前の語の語尾につなげて書く(非分離形)。

<1>は書いた通りです。your-youのように違う単語になりません(1人称単数は別です)。
<2>は、直前の語とつなげて書いて、一語に見えるように表記します(非分離形といいます)。
ただし、直前の語の語尾が「左手のない6文字」で終わっていれば絶対につなげられないので、その場合は独立形の文字を書きます。
(近々、文字についての詳しい解説の記事を書きます。もっと早くやるべきですが、だいぶ後回しにしてすみません。)

文章で書いても分かりにくいと思うので、一覧と共に用例もつけて解説します。「本」(كِتَابُ)に連結させて「~~の本」という形で示します。赤い字が代名詞です。



كتابهُ كتابهَا كتابكَ كتابكِ
①hu(هُ)(フ):彼の、彼を(それの[を])
②hâ(هَا)(ハー):彼女の、彼女を(それ(ら)の[を])
③ka(كَ)(カ):貴方の、貴方を
④ki(كِ)(キ):貴女の、貴女を

①②が3人称単数の男女形、③④が2人称単数の男女形です。
写真を見てもらえれば、前の語(كِتَابُ:kitâbu)とくっついて「彼の本」のように所有を表すのがわかると思います。また、kitâbu(本)は人称代名詞の所有がかかってるので当然『限定』の扱いですが、人称代名詞とくっついていれば、定冠詞alをつける必要はありません。また、ここでは「本」は主格なのでkitâbuの語尾はuです。




.كتابِي فِيَّ   نَدَوْتَنِي

⑤<所有格>î(ي)(イー):私の、<対格>nî(نِي)(ニー):私を
1人称単数だと所有格と対格が異なりますが、まずは所有格。

所有格「ي(私の)」は他と違って特殊な性質があります。يの前に付く単語の語尾を強制的にiに変えてîを付けます。なのでこの場合語尾を変えkitâbiとして、長母音のîを後ろにくっつけてkitâbî
(私の本)とします。また、このとき所有される方(「本」)が主格/所有格/対格のいずれであっても影響されません。したがって「私の本は/私の本の/私の本を」のいずれもkitâbîとなります。


また「ي(私の)」が長母音や二重母音で終わる単語の語尾にくっつく場合も特殊で、くっつく単語の語尾(長母音・二重母音)はそのままで「يَ(ya:ヤ)」と変化します。上の用例では、前置詞فِي(fî:フィー)の後に所有格の「ي(私の)」をくっつけて前置詞句となっています。ただし前置詞の語尾と代名詞が同じ文字なので重ね書きせずシャッダをつけて、読み方は「フィヤ(fiya)」となります。
【فِيは英語のinやaboutにあたる前置詞です。また、前置詞の後は所有格なのは以前書いた通りです。】
このように「私の」が「يَ(ya)」と変化するのは、上のفِيと双数形、複数形名詞にかかるケースが多いです。


対格のnîについては、上の用例の通りです。نَدَوْتَ(nadawta):「貴方は呼んだ(You called)」という動詞の語尾に対格の「نِي(nî:私を)」を目的語として付けた文です。これで「貴方は私を呼んだ。」という意味の文になります。





كتابهُمَا  كتابكُمَا
⑥humâ(هُمَا)(フマー):彼ら二人の[を](それら2つの[を])
(同上)          :彼女ら二人の[を](それら2つの[を])
⑧kumâ(كُمَا)(クマー):貴方たち二人の[を]

⑥⑦⑧は双数形です。主格と同じように、3人称も2人称も、それぞれ男女の別なく同じ形をとります。




كتابهُمْ كتابهُنَّ كتابكُمْ كتابكُنَّ كتابنَا
⑨hum(هُمْ)(フム):彼らの[を]
⑩hunna(هُنَّ)(フンナ):彼女らの[を]
⑪kum(كُمْ)(クム):貴方たちの[を]
⑫kunna(كُنَّ)(クンナ):貴女たち[を]
⑬nâ(نَا)(ナー):私たちの[を]

⑨~⑬は複数形です。主格と同じように、1人称は2人以上、2人称と3人称は3人以上が複数形という扱いです。動詞の活用でも同じです。



以上が人称代名詞の一覧ですが、「これで終わり!」といかないのがアラビア語の曲者なところです。1人称単数だけでも結構厄介なんですけどね…。タイトルにもあった注意点を3つほど。

[1]形容詞をつける時は定冠詞alを忘れずに!!
前回(#19)で詳しく書いたあの問題ですが、もちろん人称代名詞で所有格+名詞が作られる時にも適用されます。繰り返しになりますが、「彼の本」なら、「彼」は当然文法上『限定』名詞ですし、その限定名詞の所有格「彼の」がくっついてる時点で「本」も『限定』扱いです。
したがって「彼」「本」のどちらにかかるとしても形容詞は『限定』形になります。もちろん格にはお気をつけ下さい。以下は「彼の厚い本」。下線が形容詞「厚い」です。
كِتَابُهُ الْكَثِيفُ


[2]開け、ター・マルブータ!
何のこっちゃ!?って感じですね、これだけだと。アルファベットや女性名詞の記事でよく出てきた、「ة」という「閉じられたター(ت)」という意味の文字です。その性質として「絶対に単語の語尾にしか書かれない」というのがあります。

ただしここで問題が生じます。ター・マルブータのついた単語に人称代名詞の所有格が連結すると、ター・マルブータの位置が語尾でなくなるのです。その場合「ター・マルブータを開いちゃう」んです!
……まぁ、「開く」というのは比喩ですが、要はター・マルブータ(ة)を普通のター(ت)と見なして語中形に変えて、その後ろに人称代名詞を連結させます。以下の例は「彼らの部屋」。「部屋」はغُرْفَةٌ、語尾はター・マルブータです。
غُرْفَةٌ+هُمْ ←←← غُرْفَتُهُمْ


[3]「フ」が「ヒ」に変わる場合。
アラビア語には「母音の優先順位」のようなものがあり、それが時おり文法規則にも影響を与える事があります。アラビア語(フスハー)には3つの母音がありますが、強い順にi→u→a→(無母音)です。iが最強で、無母音が最弱ってわけです(長母音は除きます)。

それを踏まえて、紹介した①~⑬の中で①hu⑥⑦humâ⑨hum⑩hunnaの4つは変化することがあります。共通点は「フ(hu)」で始まる事ですが、その4つが「i、ay(二重母音)、î(長母音)」で終わる単語、つまり語尾が「イ」系の語にくっつく場合、「フ(hu)」の音が「ヒ(hi)」に変わります。多くは単数名詞の所有格や双数・複数名詞の所有格・対格、前置詞فِيの後に来る場合です。動詞活用語尾がiの後に対格として置かれる時もそうですね。

以下の例は上が「彼の中で」、下は「彼女らの家の中で」。どちらも前置詞の後なので「彼」も「家(بَيْتٌ:baitun)」も所有格になります。前者は直前のفِي(fî)がîで終わるので「هُ(hu:彼の)」が「هِ(hi)」に、後者は所有格になった「بَيْتِ(baiti:家)」の直後に連結させる「هُنَّ(hunna:彼女らの)」が「هِنَّ(hinna)」に変化しています。
فِي + هُ ←←← فِيهِ

فِي + بَيْتٌ + هُنَّ ←←← فِي بَيْتِهِنَّ




ふぅ。。とため息をつきたくなる文量…。まるで本を書いてるみたいな感覚です(出せるなら本当に出したいですけど)。
とりあえず今回はここまで。次回は、またもや所有格です(笑)
格の記事でチラッと触れた「2段変化」ってヤツを取り上げます。それでは!!パー


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