関西に、また暑い夏が、やって来た。


 関西電力は 昨年の夏は、大飯原発3・4号機が再稼働し、かろうじて夏の電力需要を乗り切ったが、今夏は、その原発が一基も再稼働していないのだ。


 昨年の夏は、関西電力管内での最大需要は2,816万kW(8月22日(木))となったが、最大需要想定値2,845万 kW を下回ったこと をや、火力発電機の トラブルが生したものの、 追加供給力を調達したことにより、かろうじて 需給ひっ迫に まで は至らなかった。


 今夏の関西電力管内での最大電力は2,873万kWと想定しているが、あくまで書く企業等の節電協力を263万kWを織り込んでの想定なのだ。さらに今夏は、原発が一基も再稼働していない中で、他の電力会社からの融通してもらえる応援電力を含んだ場合でも8月で2,960万kW

となり、電力の供給に最低限必要とされている予備率3%を辛うじて確保できる見通しに過ぎない。


 予備率3%と言うのをを実際の数字で見てみると、約87万kWである。この数字は、例えば、姫路第二発電所5・6号機が定格出力60万kW、新1・2・3号機が各48.65万kWであることを考えれば、発電機二基がピーク時に同時故障して停止すれば、たちまち供給力不足になるのである。


 そして、姫路第二発電所5・6号機は、天然ガスによる発電機で、運転開始が昭和48年と老巧化した発電機であり、さらに、海南火力発電所は、1・2号機45kW、3・4号機60kWでありともに重油による発電であり、運転開始がそれぞれ昭和45年と昭和48年なのだ。


 すでに、何度か故障して停止した老巧した発電機なのである。この現実を見れば、発電機二基がピーク時に同時故障して停止する可能性がいかに高いかわかると言うものである。現実にこれが起これば、どこかの都市が大停電となるのである。


 それは、人命にも危険があると言うことなのだ。電気が停止することで身近なものは、エアコンが使えなくなり熱中症による死亡、信号の停止による交通事故による死亡等、電気がひとたび止まると、現在は電気に依存する社会となっており即座に人命にかかわる。


 昨年、大丈夫だったから、今年も大丈夫ではないのだ。今年の夏は、原発が一基も稼働していないのだ、いかに昨年と比べて電力供給が綱渡りで有るかわかると言うものだ。


 能天気な私達、日本人は、今そこに有る危機にも目を背け、原発反対の大合唱をしているのだ。一度、大停電が起き、それによって多くの人命を失わなければ、私達、日本人は、本当に、目の前にある危機に、気が付かないのだろうか。



産経WESTニュースより

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140629/waf14062912000001-n1.htm


原発ゼロの夏、「いまここにある危機」に目を背けるな 社会部長・佐藤泰博


2014.6.29 12:00 (3/3ページ)正論・西論



        関西電力海南火力発電所の設備をチェックする作業員=和歌山県海南市


 あちこちにさびが浮いた建屋、大型モニターもなく、アナログなメーターがずらりと並んだ中央制御室…。運転開始から40年を超えた火力発電所は、まさに「くたびれた」という言葉がぴったりだった。


 関西電力の海南火力発電所(和歌山県海南市)。今月19日、近畿経済産業局の立ち入り調査が行われた。こうした調査は異例であり、しかも小林利典局長自らが設備の保守管理状況を確認した。それは、この“高齢”発電所こそが、夏の電力供給を乗り切る関電の命綱であることが一番の理由だ。4基で総出力210万キロワット。関電管内で最大級であり、ここでの予期せぬトラブルによる停止は即座に、関西を電力危機に突き落とすからだ。


 もちろん、“高齢”ならではの苦労は多い。最新の発電所なら大型モニターで機器のチェックができる。コンピューター制御で炉などの操作も簡単だが、ここではさまざまなメーターのチェックを職員が行い、操作も職員の熟練の腕に頼らなければならない部分も少なくない。


 補修などの期間を短縮するため、停止させた炉が冷え切る前から作業に入り、70度という高温のもと、作業員は15分交代で配管の交換などに取り組んでいた。夏本番を前に、発電の現場はすさまじいまでの緊張状態に突入しているのだ。


 実は同発電所の2号機(45万キロワット)は平成13年4月から長期停止していた。再稼働は関西の電力問題が深刻になった24年7月からだ。職員は苦しい胸の内をこう表現した。「定年から10年以上たった高齢者をいきなりフルに働かせているようなものなので…」



電力供給は綱渡り…「いま、ここにある危機」



 関西は震災後初めての「原発ゼロの夏」を迎える。


 今夏の関西電力管内の最大電力需要は2873万キロワット、供給力は2960万キロワットで予備率はなんとか3%に達し、国は7月1日から節電要請(9月30日まで)をするものの数値目標は定めなかった。しかし、内実をみてみると、特に関西は安心していられるレベルにはない。


 姫路第二発電所設備更新工事の前倒しや火力発電の夏季補修の回避…。関電の自己努力だけでは足らず、周波数の異なる東京電力からの電力融通も含めての数字だからだ。さらに言えば、海南をはじめ火力の2割は運転年数40年以上で、トラブルによる計画外停止も増えている。最大需要と供給の差はわずか87万キロワット、火力機がひとつでも停止してしまえば、たちまち危機は現実になる。


 しかし「電力供給の現場が綱渡りの状況だということが理解されていない」(小林局長)のが現状だ。震災後、関西では毎年のように電力不足への注意と節電が求められたが、これまでブラックアウトや計画停電など事態に追い込まれなかったことから、社会から危機感が年々薄れてきているのは誰もが認めるのではないか。



薄れる危機感の陰で



 24年6月、関電大飯原発の再稼働が決まった際、経済部長だった筆者は「電力はすべての産業の『血液』であり、不足すれば工場などが流出して雇用が失われ、住民の生活基盤を壊してしまう。そんな『いまここにある危機』への対応が忘れられていたのではないか」「大飯再稼働はゴールではない…ようやくスタートラインに立っただけにすぎないのだ」と書いた。


 2年がたったにもかかわらず、「いまここにある危機」への対応はおろそかにされたまま、スタートラインから一歩も前に進んでいない。危機感だけが薄れてきていることを考えると、関西が置かれた状況は悪化しているとしか思えない。


 実際には危機は静かに、しかし着実に進行している。


 韓国に工場を移したり、九州に主力をシフトしたりする企業が出ている。電力の安定供給に見通しが立たず、夏が来る度に節電が求められるようではリスクが高いと判断するのは当然だ。


 さらに、関西の中小企業の強みである部品産業にも深刻な影を落としている。東大阪などは削る、磨くなどで高い技術を持つ企業が多い。しかし、品質を安定させるため不可欠な熱処理には多くの電力が必要で、電気料金値上げなどによって、熱処理を行う企業は苦境に追い込まれている。部品産業の土台が崩れる危機にも直面しているのだ。


科学を無視、意味不明な大飯判決…CO2騒動どこ? 化石燃料9割に


 先月、福井地裁で大飯原発の運転差し止めを命じる判決が出た。科学的な検討を無視した論理構成には疑問が残るが、ここではふれない。また、原発の再稼働に必要な原子力規制委員会の安全審査はなかなか進まない。


 25年度版エネルギー白書によると、電源に占める化石燃料(天然ガス、石炭、石油)の比率は、第1次オイルショック時を突破して88%に達した。太陽光や風力発電は、原発の代替電源としてはまだあまりにも未成熟だ。


 イラクでイスラム過激派組織の勢力拡大の影響もあり原油価格は上昇が続いており、さらなる電気料金の値上げも浮上してくるだろう。

 もう一度、言いたい。「いまここにある危機」に目を背けるな、と。