『日本人の歴史意識』といふ阿部謹也の本を讀むでゐて、面白い事に氣づいた。阿部によれば、歐羅巴では基督教の普及に伴ひ呪術などが消えていき、贈與と互酬の習慣も減つたさうだ。


經濟人類學によれば、人の經濟行爲は市場と贈與・互酬、再配分に分類される。その中で市場が肥大した歐米や日本のやうな社會を市場社會といふ。


そして贈與・互酬は古代の呪術や習慣と結びついてをり、歐羅巴で贈與・互酬が縮小したのは基督教の影響らしい。


その分、市場の影響力が増して歐羅巴は市場社會となつた。或いは近代社會と市場社會は不可分の關係にあるのかも知れない。


日本は肥大化した市場社會だが、歐米に比べれば贈與と互酬の習慣が殘つてゐる。僕は一度もした事はないが、御中元や御歳暮の習慣も健在だ。


それはつまり、呪術などの民間習俗も殘つてゐるのである。そして不思議な事に、さうしたものの無まなつた歐羅巴では、近年エキソシストの需要が増加してゐる。


市場も贈與・互酬も本當は、宗教に起源を持つものだ。賣春婦などの起源も、宗教と無縁ではない。だとしたら、經濟といふものは經濟學の數式だけでは割切れないものなのかも知れない。


かうした幽靈のやうなもの(贈與・互酬や呪術などの習俗)にこそ、經濟の實態や近代化の秘密を把握する手掛(てがかり)が潜むでゐるのかも知れない。