池波正太郎といふ作家を、皆樣は御存知だらうか。『鬼平犯科帳』や『劍客商賣』などを書いた時代小説家である。此の人の書いた評傳に『牧野富太郎』といふ短篇がある。


詳しくはウヰキペデイアでも檢索するか此の本を讀んでいただきたいのだが、牧野富太郎は日本の植物學の草分(くさわけ)である。


文久二年(皇紀二千五百二十二年)に生まれた昭和の敗戰後まで生延た。本屋に行つて圖鑑を探せば今でも牧野の植物圖鑑が置かれてゐる。


尋常小學校は内容が低水準で面白くないので二年通つてやめた。だから學歴は尋常小學校中退である。その後は專ら獨學で、長じて東大の研究室に出入して『大日本植物志』を出版し世界に名を知られた。


實は此の賦録も、牧野氏の隨筆『植物物語』に大變、御世話になつてゐる。ジヤガ芋は馬鈴薯ぢやない、なんて内容の記事も本ネタは此の本である。


『植物物語』は僕の賦録と同樣に正字正假名遣なので、大變讀みやすい。専門家には珍しいユーモラスな本である。


本屋で捲つた池波正太郎の『男の紋章』といふ短篇集の一番うしろに載せられてゐたので、嬉しくて簡單に紹介させていただいた。新劇の芝居にもなつたらしい。