六勺の酒ってどのくらい?」といふ記事を、二年前の今頃に書いたのだが、皆樣は覺えてゐられるだらうか。「勺」は「しやく」と讀むで十勺が一合である。


折角だから日本の量の單位を書いて置かう。「斛(石、コク)」「斗(トウ)」「升(セウ)」「合(ガフ)」「勺」「抄(サイ)」「撮(サツ)」「圭(ケイ)」「粟(ゾク)」である。


これは秦漢以降の新單位で、『論語』などにはもつと古い單位が用ゐられてゐるさうである。これらは『塵劫記』から轉寫した。


現在でも使はれてゐるのは「斗(トウ)」「升(セウ)」「合(ガフ)」くらゐだと想ふが、江戸時代の大名の經濟力は米の生産量(石)で評價された。


僕の昔の行き著けの飲み屋で勺といふ單位が使はれてゐた話は、以前に賦録で記事にした。


「入れ子算」「ねずみ算」「からす算」など、『塵劫記』には今日では忘れられた面白い名前の算法が載つてゐる。江戸時代の算術の入門書である。


數の單位は「無量大數」まで載つてゐるが、興味深い事に『塵劫記』には小數の單位も載せてゐる。「兩(リヤウ)」「文(モン)」「分(フン)」「厘(リ)」「毫(カウ)」「絲(シ)」「微(ビ)」「繊(セン)」「沙(シヤ)」「塵(ヂン)」「埃(アイ)」とある。


後に「兩(リヤウ)」「文(モン)」は廢され、小數は「分」から始まるやうになる。「五分五分」なんて風に、今日でも使はれてゐる。


「厘(リ)」は後に、「リン」と呼ばれるやうになつた。「毫(カウ)」は「毛(モウ)」が使はれるやうになるが、本來は「毫(カウ)」である。


「毫(がう)も~ない」なんて言ふ言囘しがあるではないか。「絲(シ)」「微(ビ)」「繊(セン)」「沙(シヤ)」「塵(ヂン)」「埃(アイ)」も、何如にもそれらしい。


因に「沙(シヤ)」は「すな」、「塵(ヂン)」は「ちり」、「埃(アイ)」は「あくた」と訓ずる。「繊(セン)」は「繊細」なんて熟語がある。


僕が小學生のときは、小數は「割(わり)」「分(ブ)」「厘(リン)」「毛(モウ)」「絲(シ)」と習つた。「割(わり)」は何時頃から使はれるやうになつたのだらう。


「割(わり)」だけ音讀みの「カツ」ではなく訓讀みが使はれるのも不思議である。それから小數は大數のやうな萬進法ではなく、十進法である。