線型代數の話をしよう。僕は大學の數學科出身なので、『線形代数』といふ題の專門書は十册(じつさつ)以上讀むでゐる。


線型代數の主な話題はベクトル空間である。數學では集合に色々な條件をつけて、それを満たすものを空間といふ。ベクトル空間とは、足し算とスカラア倍ができる集合の事である。


スカラア倍とは、ベクトルに體の元を掛ける事を謂ふ。ベクトルとは、ベクトル空間の元の事で、體とは加減乗除が出來る集合の事である。


スカラア倍は、意語ではスケイラア・マルチプルといふ。スケイラアとは物差の事である。漢語で定規と言つた方が、最近では通りが良いかもしれない。


有理數體(有理數全體で構成された體)を使用するなら、2倍したり1/2倍したりできる必要がある。體だから、擴大だけでなく縮小も出來るのだ(有限體には今回は觸れない)


スカラア倍を英語に譯せ、といふと、體とベクトルの席なのでスケイラア・プロダクトと譯す人がゐる。殘念ながら英語ではスケイラア・プロダクトとはベクトルの内積の事だ。


因みにヴェクタア・プロダクトは外積の事である。ベクトルは英語ではヴェクタアと言つて、日本では昔は矢量と呼んでゐた。


その矢量は、足し算と物差に本づいた拡大縮小が可能である。線形代数の專門書を讀むと公理が八つくらゐ書かれてゐて、それを満たす集合がベクトル空間とされてゐる。


その八つくらゐの公理系が、實は足し算とスカラア倍の定義なのである。ただ、ベクトルもさうだけど、スカラア倍ももう少し練れた飜譯をして欲しいものだ。


ベクトルは矢量で良いとして、スカラア倍は物差倍で良いのではないか。もう少し意譯して拡大縮小とかはどうだらう。亞米利加人が絶對發音しないやうなカタカナ語といふのも變だよね。