二宮知子の漫画が僕は好きなのだが、どういふ訣か彼女の漫画は比較的つまらないものしか動畫化されない。二宮の一番の傑作は、何と言つても『平成よっぱらい研究所』だらう。


僕は五十代の初老のおぢさんなのだが、僕の子供の頃はまだ、御婦人の醉つぱらいは異常な浮いた存在だつた。ラヂオで女が酒を飲むのは是か非かなんて論爭が放送されてゐた。


勿論、當時も女が酒を飲むのは全く合法である。ただ當時は、女の醉つぱらひを見苦しいと念ふ眞面な感性を持つた日本人が、女を含めて澤山ゐた。


僕には支那の朝鮮族自治區で育つた囘民(イスラム教徒)の友人がゐて、支那での朝鮮族の生活について色々と話を聞いた事がある。因にこの友人は、豚肉を平氣で食べる。


朝鮮族の女は家に客が來ても、奥で料理を作つたりするだけで、食卓で客と一緒に飲み食ひしたり騒いだりはしないさうだ。


日本も僕が子供の頃は、それに近い傳統社會だつた。話を聞いて懐かしく感じたものである。今更それが良い惡いと言ふつもりはないのだが。


ただ、名作『平成よっぱらい研究所』に出て來るやうな女の醉つぱらひを、幸運な事に僕はまだ見たことがない。


僕も若い頃は醉つぱらつて散々恥づかしい事をして來たが、この漫画の女の醉つぱらいは、何と謂ふか次元が違ふのだ。


それは男と女の本來の精神的なパワアの違ひなのかもしれない。精神的にひ弱な男は、醉つぱらつても此處まで自分を解放する事ができないのである。