明治に西洋式音樂を導入する以前の日本は、支那式の五音階の音樂だつた。この五音階は陰陽五行説に本づくといはれてゐる。


勿論、日本にも嬰(シヤアプ)や變(フラツト)の概念があり、嚴密には西洋と同じ十ニ音階なのだが、一曲はだいたいそのうちの五音階しか使はないのだ。


西洋音樂はだいたい七音階しか使はない。楽譜などはハ長調(イ短調)の七音階を前提にしたものだ。だから、音と音との距離の間隔が不正確で、他の調は讀みにくくなる。


この七音階用の音譜を使用して、明治以降は唱歌などが教へられたのだが、實は日本の唱歌や流行歌のほとんどは、依然として江戸時代以前の五音階のなのである。


西洋式の音譜(あまり合理的なものではない)で西洋式の樂器を使つてゐても、歌つたり演奏したりする曲は相變らずの五音階、これが傳統の力といふものなのだらうか。


それだつたら五音階で使ひやすい音譜でも設計したら良からうと想ふのだが、こんな事は音樂の專門家は考へてみないのだらうか。


ムトウ式では十ニ音階を前提とした楽譜が使はれてゐるか、これも無駄が多いのではないか。從來の西洋式楽譜と違ひ音の距離は正確なのだが、日本の音樂は十ニ音階どころか七音階も使はい。


日本人が使ひやすくてそれでいて合理的な楽譜を、誰か設計してくれないだらうか。合理的といふのは、音と音との距離感のことだ。西洋式は七音階が前提のため、半音も全音も區別できてゐない。