福田恆存シェークスピア劇の翻訳について、最近友人と話す機会があつた。福田恆存シェークスピアの翻訳の多くは、新潮文庫で読む事ができる。


この劇の翻訳といふのは、小説の翻訳よりも難しい。ただ意味を正しく伝へれば良い、といふものではない。役者が舞台で喋つて不自然でない日本語に訳さなければならない


福田の訳はそこらへんを考慮してゐる。実際に舞台にもかけられた。私は坪内逍遥シェークスピア訳語彙が面白くて好きなのだが、あれが実際の舞台で演じる事のできる翻訳だとは想はない。


福田恆存シェークスピア劇の翻訳は、役者の稽古にも最適だ。日本の劇シェークスピア劇のやうな長い台詞は不自然である。長い台詞に陶酔できるのは翻訳劇でのみ成り立つ世界なのである。


惜しむらくは、福田はシェークスピア劇のすべてを訳したわけではない。特に史劇には拔けが多い。私はジャンヌ・ダルク魔女として登場する『ヘンリー六世』が好きだが、福田は訳してゐない。


私が讀んだ最初の福田訳オスカー・ワイルド『サロメ』であり、シェークスピア劇『リチャード三世』だつた。どちらも中学生の時に読んだが、サロメは正字正假名遣だつた。


特にサロメにはハマつて原文まで買ひ求めたが、それはyouthouと書く古文に属する英語だつた。昔から私は、結構ひどい目に会つてゐる。


とにかく、劇の翻訳を読むときは、舞台にかけられるかを気にして読むと面白いと想ふ。