先月5月7日、ルガーノの人類学博物館MUSECにて、「LA VIA DELLA PERLA(真珠道)」と題した講演を行いました。
開催中の歌川派による忠臣蔵浮世絵展に寄せ、真珠を通して東西の美意識や忠臣蔵の精神性、そして私自身のライフワークについてお話ししました。
講演ではまず、真珠が千年以上にわたり西洋と東洋をつないできた存在であることに触れました。
真珠は単なる装飾品や交易品にとどまらず、時代や文化を越えて、人々の想像力や信仰、美意識を映し出してきたものでもあります。
真珠は、貝の内側で起こる小さな偶然から始まり、見えない場所で時間をかけて層を重ね、美しい輝きへと変わっていきます。
その静かな成り立ちには、外に向かう華やかさとは異なる、内に秘めた力が宿っているように感じます。
続いて、真珠を通して西洋と東洋の美意識の違いにも目を向けました。
西洋では、真珠はしばしば威信や権力、肖像画における象徴として表されてきました。
一方、東洋では、目に見える美しさに加えて、御守りや信仰、秘薬としての意味も重ねられてきました。
さらに、今回の展示の中心である『忠臣蔵』へと話を進めました。
欧州では必ずしも馴染みのある題材ではありませんが、元禄時代の背景や、忠義、名誉といった精神性を紹介しながら、真珠との響き合いを探りました。
貝の中で静かに育まれる真珠の姿は、忠臣蔵に流れる「表に出ることのない時間」や「内に抱く芯」という美学と重なるように思えたからです。
最後にお話ししたのは、本質的な美についてです。
外にあらわれる美しさと、内側からにじみ出る美しさは、決して対立するものではありません。
私が真珠に惹かれ続ける理由は、主張しすぎることなく、時間とともに育まれた奥行きによって人の心に届く、その静かな強さにあります。
日本に生まれ、欧州で真珠と向き合う者として、二つの世界を行き来しながらその間に小さな道を見出したい。その願いを込めて、この講演を「真珠道」と名付けました。
皆さまの日々の中にも、真珠のように静かに育まれる美しさがありますように。
これからも、真珠という一粒の存在を通して、目に見えない価値や美しさを伝える歩みを続けていきたいと思っております。
最後になりましたが、ご来場くださった皆さま、そしてこの機会をくださったMUSECの皆さまに、心より感謝申し上げます。
Pearl for Bodies and Souls
このご縁に、心からの感謝を込めて




