前回からの続き・・・

ソーシャルワーカーという職業柄得意の口八丁でなんとか不動産屋のお兄さんを説得(?)し必要書類を揃えた私は、いよいよ物件探し!住居確保の第二段階に入りました。



まずは東京の物件量の豊富さにおったまげた私。今はどうだか分からないけど、去年の段階では賃貸空室率は0.3%なんて時もあったほど住宅難が続くバンクーバー。0.3%って分かりますか?100軒アパートがあったら、そのうち空いてるのは1軒以下・・・例えば、100軒が全部10畳のワンルームマンションだとしたら、空きがあるのはそのうちたったの3畳分だけって事ですよ!!!(って事か!?)。まーとにかくどんだけバンクーバーに空き物件がないかお分かり頂けると思います。これって医療ソーシャルワーカーにとって最大の悩みの種なのです。家がない患者さん、家を追い出された患者さん、家から逃げ出してきた患者さん・・・みんな行き場がありません。でも医療チームからは「早く退院先探せ!家探せ!ちゃんと真剣に家探してるのか?」とやいやい言われて「じゃーてめえが家探してみろや!」と叫びたくなったことも一回や二回ではありません。それより何よりシェルター暮らしやテント暮らしを余儀なくされている患者さんが気の毒でなりませんでした。



そんな中「シンペーさん、内見する物件を絞りたいので希望を出してもらえますか?」と不動産屋さんに聞かれ、家賃、立地、間取り、階数、トイレの種類なんかまでも希望に出せるこの東京の状況に大感動!おまけに探そうと思えば5万円台の物件まであるではないですか。すげーな東京!現在、バンクーバーはダウンダウンで最低ラインで月15万円くらいから、郊外でも月12万円くらいからで、家賃10万円以下のアパートなんて血眼になって探してもそう簡単には出てきてくれません。結果、多くの人達はアパートをシェアするわけですが、ワンルームを5人でシェアとか8人でシェアとか恐ろしい話も出てくるくらいまともな家賃では借りれない酷い状況・・・どうして大都会東京の家賃の方が安いんだ!?まったく理解できません。



まーそんな感動に浸っていた私なのですが、さっさと希望を出して内見しに行かなければいけません。ただ「希望を出せ」と言われても、東京のこの豊富な賃貸状況に慣れてない、いや東京に慣れてない田舎者の私には、そもそも何をリクエストしたらいいのかよく分かりません。だいたい東京の適正家賃価格っていくらなの?月いくらくらいの家賃が高くて、いくらが安めなのかも分からないし、また地理にも不慣れなので、東京のどの辺に住むのが便利なのかも分かりません。唯一私が出したリクエスト、それは・・・


「あの~閉所恐怖症気味なので、トイレは広めか、バスと一緒になったタイプでお願いしたいんですが」


・・・の一つのみ。というのも、昔、Youtubeかなんかで、トイレに閉じ込められて出れなくなった人の話を見てから日本の狭いトイレに恐怖を抱くようになったからです(笑)



・・・あ、そしてもう一つ。恐怖と言えば、「お化けが出る家」も嫌です!私のお気に入り患者さんの一人、日本人のKさんは霊感が強いのですが(そう本人が言った)、そのKさん、出発前の私に「シンペーさん、日本はお化けがいっぱいおるから、アパート探し気いつけや~!」と何度も注意を促してくださったのです。確かに・・・日本は湿気が強いから霊も出やすそうだ。さらにKさんはこんな話も私にしてくれました。それはKさんが関西に住んでいた時の事。Kさん宅お隣のアパートの一室にある日アメリカ人男性と日本人女性の夫婦が引っ越してきたそうです。でもその部屋は過去女性が自殺して亡くなられた「いわくつき」の部屋だったそうで、例(霊?笑)のごとく引っ越してきたその晩からさっそく夫婦の前に女性の霊が出没しはじめたそうな。しばらくして奥さんは「こんな部屋には住めないわ!早く引っ越しましょう!」とアメリカ人の夫に訴えるのですが、夫は「俺この部屋すごい気に入ってるから引っ越したくない」と頑として動こうとせず、結局奥さんは子供を連れて実家に逃げ帰ったとの事。そしてKさん「そのアメリカ人、未だに楽しそうにその部屋で暮らしてるんやで~。快適快適いうて~。まさに共存共栄やな~」そう言うと「あははは」と大笑いしました。さすがアメリカ人!日本人とは感性が違うのか?それとも奥さんよりも霊との同居の方が過ごしやすかったのか???



いや、いや、私は霊との共栄共存は結構ですので、どうかお化けの出ない部屋でお願いします!と不動産屋さんには言いたかったのですが、ただでさえ外国帰りの変なやつだと不動産屋さんのお兄さんに思われている気配がしたので、ちょっとまだこんなリクエストをしょっぱなから出す勇気はありません。でも自分の第六感はフル活用してお化けの気配をちょっとでも感じたらNGにしようとは心に決めていたのでした。



そんな不動産屋のお兄さん「あのシンペーさん、さすがにトイレだけの希望だと物件絞れませんので、もう少しないですかね~?」と困っています。そりゃそうだろう、「狭くないトイレ」と「お化けの出ない部屋(非公式)」だけではまだまだ物件は絞れないよね。やっぱり肝心となるのが立地。う~ん、どこがいいかな。私が東京で知っている・・・と言うか、馴染み深いのは新宿、それも特急あずさの終着駅だからって理由で(笑)。でも、やっぱり実家に帰るにも(まめに帰る気はないが・・・)新宿が便利だし・・・「じゃー新宿駅にアクセスが便利な地域で(あ、でも歌舞伎町はNGで。だって怖いから)」と言うすっごいアバウトなリクエストで始まった物件サーチ。それでもさすが不動産屋さんですね。結構自分のツボをついてくる物件を持ってきます。間取りもなかなか良さそうなもの多数。でも、間取りで6畳、7畳、8畳、と書かれていても、カナダ生活が長かったせいか私には今ひとつ広さの想像が出来ません。実際、間取りだけ見ると全部広そうに見えます。そんな私の様子を察したのか、「やっぱり内見しないと、実際の広さは分かりませんから、早速行ってみましょうか?」と気が利く親切な不動産屋のお兄さん。そのお言葉に従って、私はその日だけで6軒くらい物件を見て回る事になりました。



私、アパート探しちゃんとしたのなんて、正直20年ぶりぐらいかも・・・考えてみればカナダに移住してからずっと同じとこ住んでるし。と言うことは、最後に(って言うか最初でもあったけど)アパート探ししたのって京都で大学生していた頃だった(笑)。と言うわけで、ほぼ人生初と言ってもいい内見回り、最初は楽しかったものの、物件の数をこなすごとに私の眉間にシワが寄ってきます。と言うのも、それぞれ一長一短があって、間取りはいいけど日当たりが悪かったり、立地は良いけど間取りが気に入らなかったり、立地と間取りは良いけど騒音が気になったり・・・ううう、決められね~。こうビビってくるもんないんかな~と期待するも、逆に、見れば見るほどますます混迷を深める状態に(涙)。不動産屋のお兄さんも「内見のコツはあまり見過ぎ無いことですよ!」とナイスアドバイス。でも、だったら6軒も見せるなよな~と意地悪く心の中で突っ込む私。それとも、もしかして6軒の内見って少ない方なのか???そして残るは一軒。これもダメだったらまた出直しか・・・あ~あ、めんどくせ。もうその頃にはちょっと内見に疲れた、と言うか飽きてきた私。最後の物件は「マンション」の2階部屋。「2階は上階と比べて安いんですよセキュリティーの関係で。でもこの辺は治安もいいので大丈夫ですよ」と言う不動産屋のお兄さん。東京ってそんなに治安悪いの?逆に不安になる田舎者の私。そしてその2階部屋・・・お!いいじゃないか!今まで見た中で一番日当たりがいいよ。南向きで、おまけに角部屋なので東側にも窓があって風通しも良さそうです。壁もフローリングも白だからますます部屋が明るく感じます。あ~ここならお化けも出なそうですよKさん!と心の中で呟く私。「あ~じゃーここに決めます!」と即決しました。



「毎度ありがとうございます。それでは契約に移らせて頂きますね」と爽やかに言う不動産屋のお兄さん。無事に決まって良かった~と笑顔のお兄さんを見てホッとひと安心する私。その10分後に契約書を見ておったまげる事になろうとも知らずに・・・・・・

「なんじゃこりゃ~!」契約書を見せられた私の心の第一声は叫びでした。初期費用50万円!50万円!?ゴジュウマンエン???


内訳はこうでした(って皆さん普通に想像つくよね)

*礼金(家賃1ヶ月分!?)

*仲介料(家賃1ヶ月分!?)

*保険料(家賃1ヶ月分!?)

*今月分の家賃(家賃1ヶ月分!?・・・そりゃそうだ)

*雑費(鍵交換代にもお金が???)


てっきり契約時には保証金(日本でいう敷金)だけ払えばいいのかと甘く考えていたカナダ規格なアホな私にとってこの初期費用50万円には驚愕です。おまけに、この初期費用のほとんどは戻ってこないお金・・・涙。だいたい礼金ってなんだよ!?(そしてまだ存在してたのか!)なぜ借りてあげる私が大家さんに「貸してくれてありがとう」でお金払わなきゃいけないの???仲介料家賃1ヶ月分!?たった1日一緒に内見巡りして家賃1ヶ月分・・・ううう(涙)そりゃ不動産屋も笑顔になるわ!そして保険料・・・保証人の代わりに家賃1ヶ月分の保険料プラス月々さらに保険料の支払い・・・訳わかんね~!とビックリとムカつきがミックスされた気分ですっかり動揺してしまいました。もしかして悪徳不動産か!?とも思ったのですが、グーグルしてみればどうやらこれが東京の初期費用の相場らしい・・・バンクーバーよりも家賃安いぜ~と浮かれて、「アパート」ではなく「マンション」に決めてしまった事をここで後悔するものの、もう面倒くささと最後に見た物件が気に入ったこともあり、半分やけっぱちで契約する事にしたのでした。でも考えてみればそれが不動産屋の作戦だっのかも・・・疲れさせて、微妙な物件見せて、最後にいいお値段な物件に決めさせる・・・やられた!



それにしても、かりに私が家賃を抑えて「アパート」に決めたとしても、それでも初期費用は何十万とかかる事は避けられない訳で、そうなると、いくら家賃が払える収入があっても、初期費用が払えるだけの貯金がなければ家は借りれない、と言う事なんですよね?あ~だから若者のネットカフェ生活というものが存在するんだ!とガッテン。厳しい収入審査に、初期費用、さらにこの後引っ越し費用もかかると計算すれば、やはり東京での家探しも厳しいものがあるな~と身をもって実感。バンクーバーより物件数が多いのは大変よろしいけど、でも家を借りられる層が絞られている感じがするのは気のせいなのか・・・年金生活の人、生活保護を受けている人、日雇いの人、などなど生活弱者の方たちはどうやって住居を見つけているんだろう?日本のソーシャルワーカー達はどうやってクライアント・患者さん達の住宅確保に動いているのか大変興味があります。物件数は豊富だけど条件が厳しい東京VS初期費用は保証金だけだけど空き物件ゼロのバンクーバー・・・一体どっちの住宅事情が良いのだろうか?というかどっちも悲惨だね。結局ソーシャルワーカーの仕事は、家探しにおいてはどっちでも大変ってことか(涙)



もうこれだったら一層のこと、今流行の「事故物件」にでも住んで、家賃と初期費用を安く上げて、お化けと「共存共栄」した方がよかったかもね・・・と思ってしまいます(お化けと住んじゃえばお化けの心配する必要もないしね)。ちなみに、内見帰りの車内で、私、不動産屋のお兄さんに「今まで事故物件とか扱ったことあるんですか?」と聞いてみましたよ。「え?言いませんでしたっけ?さっきの物件がそうですよ」と言われたら怖いなと思いつつ、でもお兄さんは「私、基本的にそういう物件は扱いません」だってさ。じゃー大丈夫だね僕の「マンション」!


という訳で、次はいよいよ引っ越しです・・・ってこのシリーズどうでもいい???(笑)


このトイレなら怖くない!笑