ジェイのブログ

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取材先のご縁で名刺点字のエンボス加工を、静岡市葵区の社会福祉施設「ワーク春日」にお願いしてはや20年以上にもなる。費用も時間もかかるが、それ以上の効果はあると思っている。何よりも名刺をムダにせず、大切に使用するようになった。
仕事柄、これまで国内外の沢山の人と名刺交換してきたが、相手が点字名刺だったケースは3件ほどである。もちろん点字名刺の用は視覚障害者であり、これまで視覚障害者と名刺交換したケースは1件ほどだ。ただ、点字名刺の用はほかにもあると考えている。それは、点字名刺を手渡したあとの反応が物語る。誰もが一様に驚き、(読むためではなく)指で点字をなどりはじめるのである。
そのとき、私はすかさず「指触の癒し効果がありますよ」というようにしている。冗談として笑う人が多いが、案外私は本気である。それは話の糸口ともなるが、点字を読めずとも指の触感は口ほどに物をいう。とくに日本人は、和紙の影響が大きいと思われるが、紙の(ざらざらとした)触感が好きである。
欧米では本は「読むため」の媒体で、あまり装丁などにはコストも手間もかけない傾向だが、日本の本はどうであろうか。書店が推薦する平積みされた本はどれも装丁に拘りがある。デザインもしかりだが、紙を選んだ装丁で本をもったときの触感は重要である。私などはほおずりしたくなるときもあるほどだ。
これが費用も時間もかけて、20年以上も点字名刺をつづけられた理由である。私自身、印刷名刺の点字加工をお願いし、戻ってくるたびに点字のエンボスを指でなどりほくそ笑んでいる。名刺点字には樹脂印刷もあるが、やはりエンボスでなかればこの感触はない。点字内容は同じだが、同じ点字は一つとしてなく、どれも違ってどれも新鮮である。
よくバリアフリーやユニバーサルデザイン、近年ではインクルーシブなどといった考え方が注目されてきたが、エンボス加工の点字名刺にはその全ての要素を包含している。私は、鴨長明の随筆「方丈記 」の冒頭の一節「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」が好きである。
世界中で猫も杓子も持続可能性を唱える時代だが、その本質は再生(蘇生)にある。絶えない川の流れ(持続可能性)の本質は、元の水ではない(再生)ことである。「日々新たに また日に新たなり 」である。