2011年1月、ザッケローニ監督は就任後最初の公式大会となったアジア杯で優勝、いきなりアジアの頂点に立った。この大会でピッチに送り出したのは、登録メンバー23選手のうち、21選手。故障や出場停止などの事情があったのは確かだが、控えメンバーの先発起用にも一切ためらいはなく、伊野波、細貝の代表初ゴールはチームを大いに活気づけた。
約2年半が経過した現在、状況は大きく変わった。ワールドカップ(W杯)出場を決めた豪州戦でも、前日に帰国したばかりで万全の体調でない本田、岡崎が先発に名を連ねたのに対し、初招集された若い工藤と東は、直前のブルガリアとの強化試合を含めて出場機会を与えられぬまま、コンフェデレーションズカップのメンバーから漏れた。
指揮官は言う。「アジア杯で勇気を持って世代交代を図り、基礎を作った。新戦力には細心の注意を払っているが、今のメンバーはよくやっていて変える必要がない」。W杯南アフリカ大会でも主力だった本田、長友らに加え、就任後に抜擢(ばつてき)した香川や吉田も監督の期待に違わぬ成長を遂げている。短時間の起用の中で猛アピールし、今やレギュラーを脅かす存在になった清武もいる。
当然、ベンチメンバーから脱却できない選手たちは危機感を募らせる。例えば細貝。ボランチの定位置を争う遠藤はすでに33歳となり、所属先でサイドバックに回される長谷部も試合勘は万全ではない。それでも2人を押しのけられず、公式戦では先発が回ってこないのが現状。「試合に出られないのは能力が足りない証拠。この立ち位置はまずい」と唇をかむ。
振り返れば自国開催以外で初の1次リーグ突破を果たしたW杯南アフリカ大会では、開幕直前に楢崎から川島への正GK交代があり、攻撃の軸は中村俊から本田に移った。本大会までの完成度が低すぎたといえばそれまでだが、「下克上」がチームを活性化させ、猛烈なエネルギーを生んだのは間違いない。「試合に出ていない選手も高い意識でやっている。それはトレーニングを見ていれば分かる」。そう話す川島だが、「自分はもっと日本のGKを引っ張っていきたい気持ちが強い」と訴える表情には、定位置を絶対に明け渡さないという自信と余裕が垣間見える。
もっとも国内組主体で臨む東アジア杯(7月、韓国)など、本大会に向けた選手選考の場はこれから。指揮官の概念を打ち破るような、新たな力の台頭が期待される。
