スリーパー:楡周平 あのヒーローが復活!  | あつめしのブログ,読みながら食べるか食べながら読むか。

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なんと嬉しいことか、朝倉恭介が生きていた!

「Cの福音」でデビューした時は大藪晴彦の描く主人公より

洗練されていて、しかも悪をやっつけるのではなく

自分が悪そのものでありながらも爽やかで強烈な印象を与えた

ヒーローだった

しかしシリーズ完結編の五作目「朝倉恭介」で警察に追い詰められ

最後は銃弾に倒れ海に落ちた所で終わってしまったのを

楡周平ファンなら忘れる筈がない。

でもこの本の主人公は朝倉恭介ではない

由良憲二という男だ

アメリカで終身刑を受けた囚人だった彼がCIAの訓練を受けて

優秀なエージェントとして活動を始める。

日本、中国、北朝鮮の非合法組織同士の戦い。

小気味よいテンポでストーリーが展開されていく。

大藪作品との違いが色々な所で読み取れる。

例えば由良は女を抱かない、ルーレットの駒を張る手順も違う。

酒も強くない、つまりヒーローとしてはかなり現実的だ。

大藪晴彦の描く主人公は酒も女も賭け事もみんな強いんだよね。

朝倉恭介もその点では強かったが、由良は極めて普通の人間だ。

でもバックにはCIAが付いているので情報戦で有利に活動できるので

大藪作品の主人公のように窮地に追い込まれるということはない

楡周平の作品では危険は一般社会に及ぶもののケースが多い。

Cの福音シリーズでも細菌をばらまこうとする敵に

朝倉恭介が敢然と向かっていく。

この本でも敵が狙っているのは沖縄の米軍基地から飛び立つ飛行機を

ミサイルで撃ち落として民家の密集した地域に墜落させることだ

後半で由良とCIAは敵の企てを見事に阻止する。

最後に由良の働きを評価する幹部の中に車椅子の朝倉恭介が

登場してきた。

ああ、そうだったのか、前半で登場人物の中に読んだ記憶のある

名前が出てきた時にもしかして第二の朝倉恭介を作るのかと

思っていたのだが、こういう形で朝倉恭介を復活させたのか。

納得、

面白いのでどんどん読み進んでしまいます。読後感最高。

彼の復活を祝ってドライマティーニで乾杯だ。

え~とジンは?

ボンベイサファイヤで決まりでしょう。