研修中に研修医が考えていること

救急センターで研修を受け始めたひよっこの頃

センターは3次・高度救命なので当然大事故や命に関わる病気で重体の方が搬送されることが多く、研修医なんておめめまんまるでポカンとしてる間に知識や経験よりも度胸と要領が先に身についていきました

何となく「今仮眠できそう」とか、「カップラーメンにお湯を入れたら呼ばれそう」とかが感覚で分かるように

本来であれば「血液検査するならこの項目も調べておいた方がよさそう」とか、「循環器の先生も呼んでおいた方がよさそう」とかが感覚で分かるようになるはずなんですけどね

遠方の病院まで移送する時に同乗するのも研修医の仕事です

看護師さんだと勤務時間を超えてしまった時の処理が厄介なのと、

(今は医者も厄介か…20年前の医者は労働基準法が治外法権だった)

研修医でも乗せておけば万が一の時に頑張って助けてくれるのと、

あとは研修医自身の経験にもつながるから？

不肖ワタクシも救急車やドクターヘリでオーサカから岡山や徳島や石川や岐阜に患者さんをお連れしたこともお迎えに行ったこともあります

ずっと静脈麻酔をかけながら移送しなきゃいけないのに麻酔薬のアンプルを車の揺れで落として割ってしまい、焦って麻酔の深さを浅くして車には50分巻きでお願い！と頼んで事なきを得たり、

背中に入れていた痛み止めの薬を注入するチューブが抜けたらしく、始めはにこやかにお喋りしていた患者さんがちょうど真ん中くらいのところまで来た時に般若みたいな顔になって血圧も220/120くらいになり、上司に電話がつながらず、消防局を通して某琵琶湖県にある医科大学に受診して背中のチューブを入れ直していただいたこともあります

患者さんを無事に届け終えたら救急隊の隊長さんが缶コーヒーを1本恵んでくれて、隊員さんたちがタバコ1本吸い終わるのを待って、帰り道は助手席に乗せてくれてどこまで乗せていこうかと尋ねてくださったものです

オーサカから岡山に行った時は車移動が腰痛に堪えたので神戸の消防署の側の車寄せで降ろしてもらいました

当時は何も考えていなかったけど、わざわざ高速から下りてくれたのだと思います

常識的な遠慮もあって「じゃあ広島まで」とは言いませんが、遠方の移送ではわりと強固な連帯感が生まれて「トイレ」と言えば一所懸命救急車でも行けるところを探してくれるし、「眠い」と言えば処置台に寝かせてくれるし、降り際には「先生辞めんと早よ偉なってな」って言ってくれるし、救急隊は研修医が求める以上に親切だったように思います

…時代が変わったのか？

昨秋に救急車をタクシー代わりに使ってマスコミにめちゃくちゃ叩かれた研修医の先生がいましたが、たまたま救急隊とのコミュニケーションがうまくなかっただけではと思うのは私だけ？

時代錯誤かなそれとも私の研修医時代が異常なのか