人に恨まれる仕事 | 女医ときどき患者

女医ときどき患者

そしてときどきママ。

「殺す」と脅されている。

担当していた患者さんが治療薬の副作用を患って現在手術を含めた治療が必要な状況になってしまった。

薬の副作用がある一定の割合で起きてしまうことは残念ながらありうることで、治療薬開始時にそれらの副作用のリスクを含めたインフォームドコンセントを行い、記録に残した。

私の医師としての落ち度はなく、訴訟になった場合にも負けるわけはなく、副作用が疑われるとなってからも、私としては真摯に対応してきたつもりではあるが、患者さんとしては私の対応に不満があったようで、一度もお会いしたことのない患者さんのご家族が突然病院に現れ、苦情を怒鳴り散らした、という次第。

それまで、その患者さん本人に苦情を言われたこともなく、それなりの信頼関係は築けていたように思っていたけれど、そうではなかったよう。

 

私のことを本当に殺すつもりではないだろう(と思いたい)けれど、その過激な言葉を聞いてから、心がどっしりと重い。なんとなく夜道も気を付けている。

医師という仕事はほとほと割に合わない、と思う。感謝されることもあるが、逆恨みされることも多い。

さらに私の場合、大学の診療を無給で手伝っているだけなので、そろそろ診療をやめようかな、と思う。(私が普段主に行っている仕事は診療外の仕事。)

迷うのは、それでも私に診てほしい、と言ってくれる患者さんがいること。

先生が病院を移る時は連れて行ってくださいね、と念押ししてくれている患者さんも複数いる(大学は主治医の移り変わりが激しいので私の異動を心配してくれている)。診療を辞めることになったら、連れて行くことはできないので、やはり誰かに託すことになる。医局の同僚は皆良い先生なので、信頼できる先生に託すことは可能だけど、主治医・患者関係というのはやはり人間関係だから、合う・合わないというのもあるからね・・

 

そして、今もこれまでもずっとお世話になってきた医局の同僚達への思い。辞めると迷惑かな、という気持ちと、本当に医師として優秀で頼れる存在の皆ともう少し一緒に働かせてもらいたい、という気持ち。

医局の同僚達はその騒動を聞いて皆同情的で、私のことを「まったく悪くないよ。」とかばってくれ、患者と家族への対応をかってでてくれ、助けてくれた。とてもありがたい。皆、私より臨床に専念している時間が長いので、現在訴訟を抱えている先生もいるし、もっと多くのいやな思いをしている。頭が下がる。

 

パティシエにでもなったら良かったのかな。どんな職業も大変だろうけれど、おいしいお菓子を作る仕事だったら人から恨まれないのだろうか。