母は話すことが上手かった。
おっとりしていた私達は
指図されることが多く
私には
母が一方的に
喋っているように感じられていた。
父も
母の不満や愚痴など聞いても
その剣幕にはかなわず
お互いを理解するような会話は
なかった気がする。
でも母にしたら
父や私達の態度もまた
一方的だったのかもしれない。
何も言わない私達を歯痒く思い
反応がないことに
さらに言葉を多くしたのかもしれない。
頭の回転が速い母は
打てば響くような掛け合いを
望んでいたのかもしれないとも思う。
「一方的」な母という私の被害者意識は
それこそ私の
一方的な見方だったかもしれない。