「どうしよ」


ベットにうつ伏せになりながら、ケータイに向かってため息。

放課後、作戦会議に移行してしまったいつものお菓子会。
おかしなテンションになってしまった親友達の楽しそうな顔が浮かんでくる。


「2人共、人事だからってさ」

「人事じゃなくて麻子事だよ」

「せっかくのチャンスなんだから、メールしてみて損はないと思うよ」

「そうそう。うちら華のJK一年目だよ?
JKって言ったら、放課後のお菓子会と、やっぱり恋愛でしょ!!
麻子はせっかくチャンスがあるんだから、攻めて行かなきゃ!」

「別にお菓子会だけでいい」

「アホっ!!食ってばかりじゃ豚になる。
ただでさえ、部活入ってなくて運動不足なんだから恋愛で燃焼しなきゃ」

「絶対関係ないよそれ」

「まぁ、祥の言ってることはよくわかんないけど、確かにチャンスだよ。
これも中学の時にはなかった青春じゃん。
何かあったら話聞くからさ」




そう言われたのを思い返していれば、麻子のテンションとは真逆な明るいメール受信音。


『メール送った?最初が大事だからね(^^)/~~~』


祥子からだった。
30分前には祥からも似たようなメールが届いていた。


「わかったよぉ」


親友達の半ば脅しのような催促メールに、麻子はどうにでもなれとボタンを押していった。

手渡された紙に書き殴られたアドレス。
今時の高校生にしては珍しい、やけにシンプルなアルファベット達。


「夢を叶える為に、か」



麻子はそれを日本語に訳して呟いてみた。


夢って何なんだろう?
サッカー部だから、サッカー関係かな?


麻子は初めて伊武谷にいい意味で興味を抱いていた。


「送信っと…」


月並み程度の内容。
しかし、失礼にならないように何度も打ち直した文字達を確認してから、送信完了の画面を見ないまま、サイレントにしてパタンとケータイを閉じた。

いつもは着うたに設定しているのに、そうしたのは、麻子なりの抵抗のようなものだった。


「お風呂、入ってこよ」



ベットの上に放り投げられたケータイにそう言って、麻子は部屋を出ていった。


ただただ、メールが返ってこいことを願いながら

「しかもサッカー部の中心人物だって!
去年初めて出た全国大会で2年生なのに活躍したらしいよ。
あんな格好してるけど、真面目で成績優秀、教師からの信用も高いってさ。
パパもいい奴だって言ってた。」

「へー、成績優秀ねぇ…でもPAでしょ」


祥子が小馬鹿にしたように笑う。
『エリート』は頭がいいだけに他のクラスを下に見てしまう傾向があった。
実は麻子はそれが嫌で仕方なかった。
自分達は勉強面で頑張っているが、他のクラスは部活や専門的な分野で頑張っているには変わりはない。
しかし、有名大学に入り、一流な会社に入ることが偉いと考えてしまう『エリート』。
反対に、世の中勉強だけが全てじゃないと考える他の科の生徒達。
それ故、『進学棟組』と『本校舎』『技術棟』の間にはいくらか壁が存在していた。


「そんな言い方…」


麻子は顔を曇らせる。


「あっれぇ?さっきまで散々嫌な顔してたのに、庇うんだ?」

「別にそんなんじゃないけど…
祥子ちゃんわざわざと言ったでしょ」


そんな麻子を見て、祥子はニヤリと笑う。
さっきはああ言ったが、麻子同様、祥子と祥もそんな『進学棟組』の考えには嫌気がさしていた。


「んで、どうする?」


そんな2人に祥が問いかける。


「どうするって言われても」

「パパもいい奴だって言ってたし、メールしてみたら?」

「えー」

「でもさ、祥のパパを疑う訳じゃないけど、あの身なりはどう考えても不良だよね」


それは麻子も思うことだった。
正直、サッカー部はいい噂を聞かない。
特に女関係では…
それに加えてあの身なり。
本来なら喜ぶはずのこの展開。
しかし、サッカー部という事実とあの身なり。
麻子は気づかない内に、自分が嫌っている『偏見』の目を伊武谷に向けてしまっていた。


「そんなことないって!
サッカー部だけどチャラい話は聞かないって言ってたよ?
それにメールしなかったら後が怖くない?」

「確かに!よし、さっそくメールするんだ麻子」

「2人とも人事だと思って…」

「最初なんて送ればいいかな?」

「やっぱり、はじめましてじゃない?」

「なんかありきたり。もっと砕けなきゃ」


麻子の願いも虚しく、2人はメールすることにまとまってしまった。

麻子はそんな2人を見ながら、どうにでもなれと思っていた。
何かあればこの2人が助けてくれるとわかっているから


次にPB組。
PA組以外の部活の特待生と、一般生で形成されている。
全国大会常連の部活で形成されているPA組とは違い、まずは県大会を制して全国大会出場を目的としている部活の特待生が所属している。
それ故、一般生も入科でき、一般生にとっては普通科と変わりがない。


PA組PB組共に名前の通り進学を目標にしている。
ただし、『進学棟組』と違いは勉強のレベルは非常に低く、午後からはほとんど授業せずに部活をすることになっている為、例外を除き一般受験はしない。
スポーツ進学や指定校推薦、推薦入試で大学を目指している。



もう1つが情報科学科S組。
wordやExcelなどのパソコンの基本となるソフトを専門的に学ぶクラスだ。
後に出てくる3クラスと一緒に『一般生』だけで形成されている。
部活には自由に参加できるが、PAPBの特待生とは違う為、レギュラーになれる生徒は少ない。


この3クラスが『本校舎』で生活している。




最後に『技術棟』で生活している3クラス。
『エリート』『スポーツ特待生』はおらず、『一般生』で形成されている。
どのクラスもS組同様に自由に部活に参加できるが、やはりPAPBとは違いレギュラーになれる生徒は少ない。


総合情報科E組。
コンピュータープログラムを専門的に学べる他、美術面や美容面で活躍したい生徒が所属している。


自動車科A組。
その名の通り、将来的に自動車関係に就きたい生徒が所属している。


機械科M組。
将来的に工場関係や機械関係に就きたい生徒が所属している。



この3クラスは、専門的な授業が多いため、PC室や美術室、自動車工場、機械工場が併設されている『技術棟』に教室がある。
専門的な分野で活躍し、入学者を増やすのが目標である。


『エリート』『スポーツ特待生』はいないが、それぞれの専門に長けている生徒は当然いる。
『一般生』で形成されているが、それぞれの専門的な面では、彼らこそ『エリート』という人達がたくさんいる。





それぞれの特色を活かし、各分野で活躍する9クラス。
これがこの学校を支えている。