ビジネスの現場で業務を外注することは、専門性や人手の補充等々、様々な事情から、非常に多くなっています。また、テレワークの普及等から、受注するチャンスも上がり、実際にその場面はますます増えています。

その際、企業や個人事業主が調印する契約書は、「業務委託契約書」が多いかと思います。

しかし、契約書の内容をしっかりと確認せずに調印してしまった結果、後日、トラブルに巻き込まれてしまうことがあります。

期待していた業務がなされなかったが、契約上明記されていなかった。

適切に業務をしたのに、報酬が支払われなかった。

預託していた情報が漏洩した。

そこで、トラブルとならないため、トラブルとなっても、自社を最大限守るために、業務委託契約においてチェックしておくポイントの概要を整理してみました。

 

【0 タイトル】

通常は、「業務委託契約書」と印字されていることが多いといえますが、重要なのは各条項ですので、タイトルだけで判断されることは通常ありません。

 

【1 契約の目的と範囲】

契約の目的と範囲を定めることにより、委託業務の具体的な内容や範囲が明確になります。たとえば、

「本契約は、〇〇社が△△社に対し、特定の業務を委託することを目的とする」

といった具合です。目的が明確であるほど、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。反対に、目的が曖昧だと、契約の範囲が不明確になり、冒頭で述べたトラブルの原因となりやすくなり、解決に余分な費用がかかってしまいます。

コンサルティング業務やソフトウェア開発業務など、それぞれの業務に応じて、業務を区分けし、区分けされた業務ごとに委託する範囲を決めて、その内容を具体的に記載し、その内容や範囲を詳細に定めます。

 

【2 報酬と支払い条件】

報酬の額や支払い条件が適切に記載されて、円滑な支払いがなされることも、双方の信用につながりますので、契約の重要な要素となります。

そこで、報酬の額、支払期限、支払方法などを明確に定めて、双方の誤解がないようにします。

月額報酬制か成果報酬制(歩合)か、それらのハイブリッド式か、報酬形態を具体的に記載します。

また、報酬の支払いに関するトラブルを避けるため、支払いのタイミング(決まった日付、請求書が発送された日から*日以内、請求書が到達した日から*日以内、など)、もできる限り明記します。

そして、万が一、支払い期限を過ぎても支払いがされない場合のペナルティ、支払いが遅れた場合の通知方法についても定めると良いでしょう。

即時の通知により、支払い優先順位を上げ、手数をかけずに回収できる可能性があります。

https://ameblo.jp/jotomrthn24500/entry-12851988590.html

 

【3 契約期間】

契約の有効期間と更新の条件について規定します。

具体的には、契約開始日と終了日、契約期間満了後の自動更新の有無、更新の手続きなどが、明確となるように記載します。

自動更新しない場合は、

「本契約の有効期間は○○年○○月○○日から○○年○○月○○日までとする。」といった記載となります。

あわせて、契約終了後も効力を有する事項を定めておく必要もあります。

 

【4 秘密保持条項】

委託業務を遂行する過程で知り得た秘密情報を第三者に漏洩されたりしないようにするための規定です。

不正競争防止法で定める「営業秘密」に該当する場合はその範囲で法的保護を受けることも可能ですが、自社が不要なリスクを負わないためにも、業務委託契約において定めておいて、リスクを最小化しておく必要は高いといえます。

契約書案のなかに、秘密保持条項があるか確認したうえ、秘密情報の定義、秘密保持義務の範囲、期間、違反時の対応などを具体的に定めておきます。

さらに必要がある場合は、別に、秘密保持契約を締結することも検討します。

 

【5 個人情報】

個人情報保護法では、個人データの取り扱いの全部または一部を委託する場合、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定められています(同法22条)。これを受けた個人情報保護法ガイドラインがあり、これらを踏まえ、適切に個人情報の取り扱いに関する条項を定める必要があります。

 

【6 知的財産権】

受託業務の成果物について、知的財産権が生じる場合など、その権利の帰属先などについて定めておく必要があります。

親会社が下請法上の親事業者に該当する場合、同法違反の懸念を払拭する条項を検討すべき場合がありますので、注意が必要です。

 

【6 契約不履行に対する対応(契約解除、損害賠償請求権など)】

取引の開始時点や契約を締結する時点では、あまり考慮されないところですが、契約不履行が発生した場合の対応策も契約書に記載する必要があります。

逆に、そのような場合を生じさせないためにも、一定のペナルティについて定めておくことが役に立ちます。

契約解除ができる場合、催告を要するか否か、違約金や損害賠償の規定を定めておきます。

 

【7 再委託】

再委託を予定している場合、法律上、その規定がなければ、無制限に全部の業務を再委託できるわけではありません。

委託業務の一部または全部を第三者に再委託する場合の条件を定めます。再委託が認められる場合、その範囲や条件を具体的に記載します。また、再委託先に関する事前の承認や通知義務を定めて、再委託先の選定や管理が適切に行われるようにしておく必要もあります。

 

【まとめ】

業務委託契約においてチェックすべきポイントを概説として整理しました。適切な契約書を作成することで、可能な限りトラブルを未然に防ぐことができます。

トラブルが生じた場合でも、適切に解決に向かうことができます。

弁護士は、トラブルに対し実際に裁判や交渉の場面で戦っていることを通じて、トラブルの勘所を、経験のみならず知識として有していますので、弁護士による契約書チェックは、企業が万全な業務委託を動かしていくための重要なピースとなります。

各論についても、整理してみます。