前回は、反省ということについて書きました。
今回は、上達するための思考について、核心に触れようと思います。
まず、レッスンには、すごく大切な、しかし厳しい事実があります。
それは、先生が生徒を上手くするわけではないということです。
どんな素晴らしいピアニストも、
どんな百戦錬磨の名教師も、
あなたの代わりに練習してあげる事は、できません。
練習の方法を、教えることはできます。
表現の方向性を、示すことはできます。
理論や知識について、理解を促すことはできます。
でも、実際に、その内容を消化し、吸収するのは、あなた自身です。
これは食べ物を食べることと同じです。
例えば、介護の現場では、食事介助というのがあります。
手の機能が弱って、お箸やスプーンを持って口に食べ物を運べなくなった人を、介助するわけですね。
そして、歯で咀嚼することが困難な人のために、一口大、刻み、ゼリー状、ペースト状という具合に、提供する食事の形態も変えています。
しかし、口に入ってから先は、その人自身の力で、食べ物を飲み込み、胃に運んで、消化せねばなりません。
いよいよ自分で飲み込むことが出来ないとなると、胃まで通したチューブにより栄養を直接流し込む経管栄養という医療行為をするかどうかという話になるわけですが、それはまさに命を維持するための最終手段です。
話を戻しますと、学習とは、与えられた知識や見識を、消化・吸収する営みです。
教師ができるのは、あなたが消化・吸収しやすいように、学習内容を分析し、習得するための練習方法を、とことん具体的に伝えるところまでです。
そこまで来たら、あとは、自分で飲み込まなくてはいけません。
あなたは、自分の力で上手くなるしかないんです。
どんな先生に習おうとも、その事実は変わりません。
だからこそ、日々の練習方法や、毎回の演奏について、反省する必要があるのです。
この揺るぎない事実から目を背けずに、自分の頭で、よく考えながら、たゆみない努力をしていける人のみが、たどり着ける高みは、確かに存在します。
Panasonicの創業者、松下幸之助さんは、こんな言葉を残しています。
『師をそのまま模倣するだけでは師以上にはなれないけれど、その考えをよく吸収消化して自ら励んでいけば、師以上の人物になれるかもしれませんね。』
まさに練習の極意です。
今日も1日、実りある練習を。
ではまた☺️