最近、「AI vs 教科書が読めない子どもたち」と言う本を読みました。
平積みになっている本を適当に取ったものですが、面白かったので紹介します。
著者は研究者であり数学者です。
本の中ではご自身が取り組まれた“ロボットは東大に入れるか”のプロジェクトを通じて、AIに出来る事から近未来への警鐘を鳴らすものになっています。
著者は1つの結論として、今後はより高いレベルでのコミュニケーション能力を持った人が必要とされてくることを述べています。
それは、その能力がAIの苦手とするところであり、今後も人の力が必要になってくる分野だからです。
そして、コミュニケーション能力の代表として“読解力(≒文章を読んでその意味を理解する力)”を挙げていますが、特別な知識や能力を必要としないような基礎的な内容のテストを用いて中高生や大学生を対象に幅広く読解力についての調査を行っています。
例えば次のような例題が挙げられています。
問題 次の報告から確実に正しいと言えることには〇を、そうでないものには×を付けて
ください
報告 公園にこどもたちが集まっています。男の子も女の子もいます。
よく観察すると、帽子をかぶっていない子どもは、みんな女の子です。
そして、スニーカーを履いている男の子は一人もいません。
(1)男の子はみんな帽子をかぶっている
(2)帽子をかぶっている女の子はいない
(3)帽子をかぶっていて、しかもスニーカーを履いている子どもは、一人もいない
答えは
(1) 〇
(2) ×
(3) ×
です。
分からないわけではないけれど、難しいと感じました。
この問題の大学生の正答率は平均で約65%だったそうです。
そして、その結果は大学の難易度に比例しているという結果が出ました。
ここから、新井さんは「どの様な大学に進学するかは、学習量や知識量よりも読解力の差が影響しているのではないか」と考えを展開していきます。
つまり、勉強が出来ない≒教科書に何が書いてあるのかを理解できていない という仮定に繋がります・・。
(この展開が面白いと思いました)
そして、何より私が気になったのは、中高生を対象に行った結果において学年が上がるごとの得点の伸びがほとんどなかったという事です。
勉強の中でたくさんの語彙は獲得していくにもかかわらず、伸びていないという結果は、
つまり、語彙力と言うものは、それまでにある程度形成されているという事が考えられます。
乳幼児段階での発達や生活環境が大きく影響しているのだろうと思います。
このことから、その時期を預かるという責任を再認識しました。
そして、我々の行っている時代の子育ては、10~15年後を見据えていかなければならないのだと思いました。
どうしても目先の成長や要求にとらわれる事がありますが、このことを肝に銘じて今後も精進していかなければいけないなと考えました。
私は数学者ではないし、AIについても詳しくないので書かれている事が本当かどうかは分かりませんが、少なくとも、今後より強力に必要な力として、読解力を挙げられた過程には共感できるものがありました。
詳細の気になる人はお買い求めください。
書かれている内容は難しい所もありますが、丁寧に説明されていると思います。
東洋経済新報社 「AI vs 教科書が読めない子どもたち」 新井紀子著