夏休みと言えば楽しい思い出ばかり。

そんな夏休みの中で唯一苦しんだのが

「読書感想文」。


元来、じっと座って本を読む性分でもなく、

ましてや読んだ本によって

ココロがコロコロと揺さぶられる性分でもない。


毎回、嫌々ながら巻末の寄稿文だけを読み

知ったかぶって感想文を書き、

担任に見透かされ、

さらに読書が嫌になるという悪循環を

何度も繰り返してきた。

そんな私が久しぶりに読んだ本

「八月の六日間」。





仕事帰りの丸ノ内線に揺られながら

1日数ページずつ読み進め

三週間以上かけ、ようやく読了。


振り返ってみると

主人公である「わたし」の

人間らしさというか内面が

よく描かれた物語だった。


さまざまな季節の、非日常である山行と

そのスキマ、スキマに挟まれる日常。

甘いスイーツに

塩分を加えたときのごとく

背反条件にして見事なマリアージュ。


以前のブログ記事で

私はソロ登山も好きだ、と書いた。

なぜなら、自分と向き合えるから。





この主人公も基本はソロ登山。

その中でも特に

「心がざわついた後の山行」が

物語として取り上げられている。

おそらくは主人公がその心の中の「何か」に

けじめをつけるためだろう。


「自分と向き合う」という表現が

彼女のソレと同義なのかはわからない。

しかし、当たらずとも遠からずだと感じた。





あるシーンで主人公は仕事仲間と

信州つながりで「あずさ2号」の

歌詞について議論を交わす。


別の男と旅に出る女が

元恋人のことを思い出すだろうか?

これが、出版女子には腑に落ちなかった。


男は長く元恋人を心に想い続けるが

女は綺麗さっぱり忘れるのだそうだ。

男の恋は別名で保存、

女の恋は上書き保存。

私もそう聞いたことがある。


「この歌詞を書いたのはきっと男だろう」

とその場では結論づけられ

主人公を含め一同が納得する。

しかしその後、作詞は女性だったことが判明し、

「ええええええええ」と、

まさにこの表現の通りに主人公が驚愕する。



最後の山行の直前。

彼女の心の中でずっと

「ざわつき」の根源になっていた人と

運命的な再会をする。


かつて主人公と同棲していた昔の恋人であり、

最近、若い同業者と結婚をした人物だ。


「あずさ2号」の議論で

「女は昔の男を引きずるわけがない」

と熱く語っていた主人公だったが、

その大いなる矛盾に

本人は気づいていない。

これもまた面白い。


面白いのは

「空飛ぶうな重」だけではないのだ。


運命の再会の時の様子を

体調を崩し孤独の山中で回想する。

しかしそこにはもう

けじめがつけられたかのような

あるいは憑き物が落ちたかのような

そんな心情が感じられた。


山を通じて

主人公が新しい人生の一歩を踏み出したわけだ。

本作は、ほかのエピソードも含め

主人公の心の成長記のように思えた。


作者は後のインタビューで

こう答えている。


人生における辛いことや苦しい気持ち、

取り返しのつかないことと

向かい合って生きていく人間の姿が

伝えられたらな、と考えました。

苦しい気持ちから解放されたいという思いは、

多くの人たちがさまざまな形で

抱えているものです。

その時に、山登りは有効な手段だと思いました。

(中略)

一人で登ることによって自分の中に没頭し、

無心になってくる。するといろいろな思い出が

浮かんでくるでしょう。

無心の白がキャンバスだとすると、

そこに思い出の色が入り込んでくるわけです。」


これまで私が思っていたことが

まるでどこかでハッキングされたかのように

まさにそのまま言葉になって現れてきた、

そんな気持ちがした。



作中、スノートレッキングの回で

ツアーガイドが

「何もしないツアーを考えている」という。

雪の中の山小屋で、

何もせず、ただ「その場所にいること」そのものを

愉しむツアーだという。


が「そんなの客が集まるわけはない」

と、上司に一蹴されている。

しかしその考えに主人公は大きく賛同し、

そのツアーが開催された暁には

ぜひ参加させてほしいと

主人公はツアーガイドに

自身の名刺を渡していた。


奇しくもこの冬、

私も同じことを考えていた。

すでに日程、ルート、宿泊先、

アプローチの交通機関も調査済みだ。

静かに雪が降る山小屋で

この主人公と同じ気持ちに

浸ってみようと思う。


夏休みの思い出を振り返るよりも

来るべき冬休みに

思いを馳せよう。



話しは変わりますが、

最近電車の中のディスプレイでよく流れているコレ







どう見ても

「元気が、きたろう」

ではなくて


妖気が、きたろう」だろうと

毎回心の中でツッコミを入れています。


妖怪アンテナが反応しまくりやがってます(笑)




ひまわり平成最後の夏休みも終わり!晴れ
夏の思い出を忘れないうちに

ブログに残しておきましょう照れ

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