私が亡びる前に 一輪の花を
隣の病室の子に 置いておこう
・・私は元気だよ また明日・・と言って
何事も無いように 部屋に戻ろう
やり残した事はないかい?
隅にはじいた自分はいないかい?
嫌ったりした日々の水たまりには
どこか悲しくも美しい何かが
映り込んでいたよ
生き延びた人たちに 最後の歌を
嘘交じりの幸福論と 笑えた犠牲者
戦時中の子守唄と 消えた讃美歌
涙に全部まとめて 一つの雫に
それが今から生きる世界に
大きな傘をさしてくれるから
今夜はただ・・
安らかに 瞳を 閉じるんだ
私が亡びる前に 一冊の本を
隣の病室の子に 読んでいこう
・・めでたし めでたし はい おしまい・・
あの子には何か 残しておこう
やり残した事はないかい?
奥で蹲った自分はいないかい?
無くしかけた愛の片隅で
誰か悲しくも 美しく見えたのは
いつかの 雫 のせいだよ
生き残れず人たちは 最後の歌で
嘘で固めた人間を 笑えた犯罪者を
戦後の統一世界と そこにない讃美歌
口に含んだ全て 一つの偽りに
それで今から生きる世界は 平和を肩書に
殺人 不倫 自殺 の毎日で
眠れる日など ないんだ
この世界が 嘘つきだったよ
平和とは 縛られた日常だったよ
戦争は いわゆる商売だったよ
愛なんて ここじゃ罪と同然だったよ
勝手に書き換えられた 人のあり方を
笑って賛成したのは 人 だったよ
やり残した事はないかい?
生き延びた人たちに 最後の歌を
嘘にしか興味ない人間に
空から落とされた 一つの雫に
この雫は誰かの涙かい?
悲しみを背負った 弱い人間たちに
何を求めているんだろうな・・
せめて私が亡びる前に
この体は 誰かのために
使い古してから 終えるとしよう
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