日本野球への提言─その3─ | まだまだ続く独り言

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在米スポーツライターの雑記帳

2日間にわたって日本球界に向けた自分なりの改善策を提示してきました。とりあえず今回は最終回として、日米格差の是正について考えてみたいと思います。

もうNumberのコラムでも何度か論じている通り、日本は年俸格差があるのみならず、待遇格差を含めていろいろな面で10年以上遅れている気がしています。それも日本人選手がMLBに流出してしまう要因の1つだと考えられます。ならば少しでもその格差を縮める作業をしていかねばなりません。

まず一番の問題は施設の格差です。まだまだMLBから比べれば、日本のチームの施設面での設備投資は十分だといえません。

例えば、キャンプ施設です。現在ではMLBのキャンプ施設は単なるキャンプ中に使用するだけでなく、1年を通して(オフも含めて)選手たち(マイナー選手も含め)がトレーニング、リハビリができる施設として、十分な設備が揃っています。そのためヤンキースのジーター選手がオフの間はキャンプ地のフロリダ州タンパで生活しているように、多くの選手がフロリダやアリゾナを拠点とするようになっています。

またマリナーズ時代のイチロー選手のようにオフの間に本拠地の球場で練習をする選手もいます。つまり球場自体も十分な施設、設備が整っているということです。それほどMLBの各チームは、所属選手が1年を通して野球に集中できる環境を用意しているのです。

それに比べて日本の場合は、まだまだキャンプ施設も球場も十分な設備が揃っていません。最近ではクラブハウスなど球場の改装工事を行っているチームも増えていますが、あくまで改装工事のためスペースは限られており、トレーナー室やウェート場などMLBのようにすべてを充実させることは不可能だと思います。

特に遠征チームの球場内のクラブハウス施設は劣悪だと聞いています。現在も遠征中の選手たちは宿泊ホテルでユニフォームを着てバスで球場入りし、試合後もユニフォームのままホテルに戻り、そこで各自自室でシャワー、入浴しなければならないのです。もちろんMLBは両チームともに球場ですべて用事を済ませることができます。

施設というハード面ばかりではありません。各球場のクラブハウスにはチームが雇った選手の世話をする複数(これはチームによってまちまちですが5名前後が相場だと思います)のスタッフが常駐しています。通称“クラビー”と呼ばれる人たちです。彼らが球場にいる間の選手たちの身の回りの世話をすべてしてくれます。もちろん食事も用意してくれますし、ベンチのドリンクやスナックの用意、さらにはちょっとした個人的な用事(例えば試合後のレストランの予約等)まで世話をしてくれます。

さらには試合後のユニフォームの洗濯、スパイクの泥落とし&磨き、クラブハウスの清掃と、常に選手が過ごしやすい環境を提供してくれるのです。これは本拠地のチームのみならず、遠征チームにも同様の世話をしてくれるのです。実はMLBとマイナーリーグの大きな違いは施設面もなることながら、このクラビーの充実度の違いがかなり大きいのです。

もちろん新たにキャンプ施設を建設したり、球場内の改装工事には莫大な資金が必要となります。日本の各チームが実行するのは簡単ではないでしょう。しかしクラビーなどのスタッフ採用はすぐにでもできることですし、それだけでも選手の負担を相当軽減できると思います。

すでにMLBを経験した日本人選手たちが日本に戻っているのですから、彼らからどんどん意見を聞いて改善していくべきだと思います。

それにはまずNPB関係者の人たちが根本的な考え方を変えなければならないでしょう。選手が野球に集中する環境を整えるということは、グラウンド上での選手たちのパフォーマンスが向上し、それによって野球の質も上がり、ひいてはファンも満足してくれ、球場にファンが集まってくれるのです。その考え方がしっかりしていれば、いろいろな改善策が実現していくことでしょう。現在のように球場内のウェート場は本拠地チームしか使用させないなんて狭量な考え方が罷り通っていることが不思議でなりません。

以上大まかではありますが、3つの観点から自分が考える改善策を論じさせて頂きました。元々Numberfのコラムで日本球界に対する問題提起をしようと思ったのも、彼らの視点、思考法が常に内向きのまま問題を棚上げにして、無駄に時間だけを積み重ねていることに失望感を抱いたからです。そしてそんな閉塞状況を少しでも打破すべく、ファンの皆さんにも違った角度、視点から捉えてほしかったのです。

今後はここに述べられた私の意見を踏まえながら、私のNPB関連のコラムを読んで頂けると幸いです。お付き合いありがとうございました。

今日はこの辺で…。