つい最近ですが「おお、かようなものが出ていたか?!」と思ったCDがありまして。近年になって発見されたという作曲者オリジナルのスコアに従ってあの「サンダーバード」の音楽を再現したというものでありました。

 

 

少々前のTV朝日「題名のない音楽会」で吹奏楽特集だったかのときに「サンダーバード」のテーマ曲が演奏されたのを聴いて、「かっちょええな!」と妙にわくわく感を抱いていたものですから、こうしたCDが発売されていることを知ったときにはそれこそ即買いに及びかけたという。

 

ですが、いささか冷静になって試聴をしてみますと「?」と思うことに。メロディは間違いなく、あの「サンダーバード」なんですが、「何か違う…」と。まあ、考えてみれば当たり前でもあろうかと思いますのは、オリジナル・スコアによる再現ではあってもオリジナル音源そのままでない…ということでありましょうか。

 

さほどにマニアックな領域には踏み込んでおらないものですから、どこがどうとは詳らかにできないものの、微妙な違和感があるといいますか。それだけイメージとリンクした音楽にはなかなかに拭いきれない残像のようなものがあるのだなとしみじみ思ったわけでありますよ。

 

ということで、このCDを購入するという考えはいっとき色めきたちはしたですが、急速に鎮静化していった…という話を長い前振りにして、読響の演奏会を聴いてきたというお話であります。

 

 

ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、そしてプロコフィエフのバレエ音楽「ロミオとジュリエット」から抜粋の数曲、これがプログラムでありましたけれど、ここで触れるのは最後の「ロミ・ジュリ」。

 

先ほど「イメージとリンクした音楽にはなかなかに拭いきれない残像が…」と言いましたですが、「ロミオとジュリエット」と聞いてプロコフィエフ以上に結びついてしまう音楽があるものですから、どうしてもその世界と比べてしまうといいますか。

 

ちなみにそれはベルリオーズでもチャイコフスキーでもなくして、実はニーノ・ロータ。1968年制作のイタリア映画版「ロミオとジュリエット」です。シェイクスピアの戯曲の雰囲気に比しても「甘い、甘いよ、甘すぎるよぉ」という気もするメロディですけれど、とにもかくにもエバーグリーンになっとりますからねえ。

 

ですので、プロコフィエフの曲でバレエを実際に見て馴染んでいる人はともかく単純に音楽として耳を傾けるとき、冒頭はSF映画か、中盤は冒険活劇かといった気がしてしまうのでありますよ。

 

だからといってプロコフィエフの音楽がだめだとか詰らないとかではなくして、それほどに出来あがった印象に入り込むのは難しいというわけでして。

 

ところで、今回の演奏会の目玉はむしろヴィクトリア・ムローヴァを迎えたシベリウスのヴァイオリン・コンチェルトであったかも。

 

細身ながらも堂々たる風格、それでいて実に繊細で端正な音楽が流れてきたですが、個人的にはそんな音色の故かアンコールで聴いたバッハの無伴奏の方が「これ!」というツボに嵌るものであったような。それだけでも聴いた甲斐があったなと思ったものでありました。