なんとはなしに手にとった本は中公新書ラクレの一冊「23区格差」というもの。長らく東京に住んであちらこちらを見て回る中では、区ごとに個性と言いますか、何かしらほの感じるものが無しとはいえず…てなことで読んでみたわけですが、個人的にはあまり好感の持てる話ではなかったなあと。
だいたいカバー写真でご覧になれますように「港区904万円、足立区323万円」と大書されているのは所得水準(年収)で、「年収・学歴・職業が非凡な区、平凡な区は?」とか、「大卒は中心部、高卒は東部に集中?」、「あなたの区は何クラス?」とか、そんなような惹句には「それが何か…?」と思うところでして。
だったら何故に手にとった?となるやもしれませんけれど、図書館で借りたときにはかような言葉の踊る帯は外されておりますものですから。
さまざまな統計を用いて「なるほど…」と思えることもありますけれど、東京で住む場所を間違えないようにするための案内的なところは、個々人が何を求めるかによって、どこを良しとするはまちまちとしながらも、どうも作者目線というのが感じられてしまう。
まあ、それが個人的には合わないなと思ったということでありまして、内容に深く立ち入るよりは「そうなの?」と思ったことだけ触れてみますか。まずは何より、これまで気が付かなかったのは不思議なくらいですが、「荒川区は荒川に面していない」ということ。
ご覧のように荒川区のへりは隅田川であって、その向こう側にある足立区が荒川と接しておりますね。にも関わらず、荒川区がそういう名前になっているのは、考えてみれば思い当たる節があるわけでして。
ご存知の方も多いでしょうけれど、今の地図で荒川とされる川は大正から昭和の初期に掛けて人の手で掘られた放水路(人工の川)であって、それ以前には存在せず、隅田川と一般に呼ばれている川が荒川の下流域、つまりは荒川そのものであったのですね。
ですから、今となっては隅田川に沿っているのに荒川区とは?とも思えるところながら、実は何の不思議もないということになるという。にも関わらず、「そうなの?」と考えてしまったのは、荒川区が今現在、荒川(放水路)に面していないと認識がなかったのですなあ。
こうしたことは(本書にも出てきたりしますが)、品川駅は品川区でなくて港区にあるとか、目黒駅は目黒区でなくて品川区にあるとかいうあたりと似たようなものかもしれませんですね。
また、全く別の話になりますけれど、「サザエさん」の家のことにも少々。2世帯7人が暮らすという点で大きな家だろうという想像はできることながら、本書に曰く「物好きな人が計算したところによると、敷地は93坪」なのだとか。
一坪が畳2畳分とすれば186畳分の敷地、つまり6畳間なら31部屋分となるのですから、これは広いですよね。もちろんサザエさんの家には庭がありますので敷地全体が家でないにしても、東京では邸宅の部類に入ってしまうのではなかろうかと。
ですが、父親の波平はいわゆる普通のサラリーマンに思われます。もしかすると、物語の背景として先祖が大身で伝来の土地かと思えば、Wikipediaによれば波平の転勤で博多から東京に引っ越してきたという単なる転勤族とのことですから、相続で受け継いだということでもなさそう。
漠然と「広いな」と思っていたものが、実際にそういう広さなのだと聞かされて「そうなの?」と思ったですよ。…とまあ、なんだかどうでもいい話に終始してしまいましたですね…。