アメリカの大統領就任式が近づいてきたから思い付いたというわけでもないのですけれど、つい先日に両親のところを訪ねた折のこと、父親の「頭の体操」にでもなればとトランプを取り出したのでありますよ。ひと頃は家族団欒のお供としてずいぶんと親しんだものですが、いつしかそれも昔のこととなってきて…。

 

それでも「まだ、こんなものをとってあったか」ということの多い両親のところには、当然のようにトランプが眠っておったわけですが、母親の曰く「最近、お父さんがぼけちゃって…」と母親が(同年であるにも関わらず)頻りにこぼすものですから、肝心なのは何のトランプゲームをやるかということですな。

 

「ナポレオン」などといった小難しいゲームは端から排除して、最も単純なのは「神経衰弱」ではあるも、これはひたすらに記憶力勝負なので老齢には負担だろうなあと。結果、まずは「ババ抜き」で小手調べということになったのでありますよ。やってるうちに、何故か不思議とババが父親のところに回るといった、かつてのジンクスそのままに2~3回やってみたところで、「この分ならば、差支えなさそう」ということで、「七並べ」に移行することに。

 

そんなこんなの経緯でもってトランプを取り出し、「七並べ」を(1かKか、端のカードまで並んだら反対端から折り返して出さないといけないというふうに少々難易度を上げたバージョンで)を何度か繰り返しやったところの感触ですが、要するに父親はぼけておらないという結論に、一堂到達したのでありますよ。

 

カードのマークと数字の並びさえ分かれば、ただただ並ぶものを出していくのは誰にもできることながら、「ここでこのカードを出すのは得策ではなかろう」てな戦略(とは大げさですが)を立てながらプレイを進めるのは、とてもとてもボケていてはできることはないわけです。ま、その戦略が結果、大失敗に終わったりするにもせよ、ですね(笑)。

 

聞いてみれば、父親がボケちゃって…という母親の思い巡らしは「今日が何日の何曜日かも分からなくなっているようで…」てなことからも来ているような。でも、これって退職後の人には(年齢に限らず)あることかもと。

 

東京都の場合(といっても地域差はかなりあるようですが)、曜日ごとにゴミに収集に分別が必要で、ともするとこれが「明日は何曜日?」に思い至るよすがとなったりもするところながら、老齢極まってきた両親宅ではケアマネジャーを経由して、「何の分別も不要。一からげに出しておいてくれれば、自治体で回収します」ということに最近なったようすなのですな。これでは、曜日が分からなくもなろうというものです。

 

もちろん、自治体としては老齢者の負担軽減のために行っていることながら、頭の体操的には手回しが良すぎるということにもなりましょうか。とにもかくにも、ヒトという生き物はひたすらに「楽になる」ことを目指してひたすらに働いてきた末に、いざ「楽になる」ばかりでは身体の機能が衰えるばかりで…てなことにもなるとは、なんともやっかいなことではありませんか。

 

ともあれ、年齢が年齢だけにあちこち不具合を抱えるようにはなっていますが、それでも週2回、午後にデイサービスに通い、体を動かしているようですので、それはそれで良いとして、頭の体操の方は折々訪ねたときにトランプゲームにでも打ち興じるといたしましょうか。ゲームの最中は、普段に無く生き生きとしていたようにも見受けられましたしね。