京都・伏見に出かけて淀川のあたりをうろちょろしたわけですけれど、土地勘が無いということはこういうことなのでしょうなあ。伏見の市街に近い京阪中書島駅は京阪本線とは別に京阪宇治船と言う路線も通っていたのであるかと。つうことは宇治にも行けるのかぁ…となりましたときに、また性懲りもなくむくむくと、では平等院もついでに(失礼!)寄っておくかと思い至った次第でありますよ。

 

実際、中書島駅で京阪宇治線に乗り込んでみれば、なんとものの15分ほどで京阪宇治駅へ到着してしまったではありませんか。しかしまあ、この路線は沿線によほど高校が多いのでしょうか。取り分け女子学生が多かったとなれば、数々の女子高でもあるのであるかと。折しも(たぶんですが)中間テストの頃合いだったのでしょう、短い時間ながらも車内ではそこここで教科書を開いている姿が目にとまったのがなんとも印象的でしたなあ。

 

 

とまれ、そんなこんなで京阪宇治駅に到着いたしました。先に「性懲りもなく…」と申しましたのは、伏見稲荷大社の混雑がもしかしてここでも再びと思ったからでして、高校生の通学時間帯くらいの早めに出かけたところ、差し当たり人波が渋滞を引き起こす気配の無いことにほっとしたものです。

 

 

駅のすぐ傍らを宇治川が流れておりまして、有名な宇治橋もかほどに駅の目の前であったのですなあ。されど伏見から電車でほんの15分ながら、周囲に山が迫ってきた感がありありとは。宇治橋から上流方向を見やれば、もはや山峡であるような。

 

 

伏見で三栖閘門の外側を流れる宇治川の姿を垣間見た際にはもそっと荒ぶる川の印象がありましたですが、ここでは随分と面持ちが異なるようにも思えたものでありますよ。

 

 

で、たった今渡ってきた宇治橋ですけれど、これまた長い歴史を持っておるようですな。橋のたもとに解説板がありました。

千三百年以上もむかし、大化二年(六四六)に初めて架けられたと伝えられる、わが国最古級の端です。その長い歴史のなかで、洪水や自身などの被害はもちろん、戦乱に巻き込まれたことも数えきれません。しかし、橋はそのつど架けなおされてきました。ここ宇治が、交通上重要な場所であり続けたことのあらわれでしょう。

幾たびもの洪水があったろうことは、今では上流に天ケ瀬ダムが設けられてなおこれだけの流れですので容易に想像されるところながら、土地勘の無い者にとりましては、宇治が交通の要衝であって、戦乱にも巻き込まれた…てなあたりがピンとこずにおったのですなあ。

 

後知恵になりますが、改めて地図を見てみれば確かに京都と奈良を結ぶ途中にありますし、もそっと西側の伏見のあたりにはかつて巨椋池があってこれを迂回することになるとなれば、どうしても宇治を通ることになるのであるか…と気付かされたり。

 

また、戦乱という点では壬申の乱が挙げられるようですけれど、いやはや古い古いお話の場所がここですか?!と。犬も歩けば…ではありませんが、どこを歩いても歴史的事物に接することになるというのは、関東にはそうあることではないわけで…。と、解説板の説明はさらに続きます。

またこの橋は、古今和歌集や源氏物語をはじめとする文学作品、絵画が工芸品といった美術作品に描かれるなど、古くから景勝の地・宇治の象徴として親しまれてきました。

ということで、宇治橋を渡り切った先のたもと、ちょうど橋について説明する解説板があるあたりですけれど、「夢浮橋ひろば」なる小園地がありましたなあ。「夢浮橋」というのが『源氏物語』に由来するということだけは分かりますが、また別の解説板「源氏物語と宇治」にあたっておかねばと思うところです。

 

(源氏)物語は全部で五十四帖(巻)からなります。このうち最後の十帖は、光源氏の息子薫や孫の匂宮と宇治に住む三姉妹との実らぬ恋の物語で、特に「宇治十帖」と呼びます。「橋姫」ではじまり、「夢浮橋」でおわる「宇治十帖」には、朝霧にけむる宇治川の流れが不可欠でした。「源氏物語」は実話ではありませんが、いつの頃からか、物語の舞台はここであってほしいという人々の思いによって、宇治川周辺に宇治十帖の古跡が作られました。

そうですなあ、実話ではないのですよねえ。さらに「宇治十帖」はそも紫式部の作ではないてな見解もあるやに昔聞いたことがありましたですが、その点に関しては昨今、計量言語学の分析手法でもってほぼほど紫式部の実作とされているようでありますなあ。

 

 

ちなみにこちらの絵は解説板にあった、伝土佐光則筆『源氏絵鑑帖』より「夢浮橋」(部分)ですけれど、日本の古典絵画を鑑賞するに「源氏物語」を知っておくことは欠かせないと、あちこちの美術館の展示に向き合うたびに思い知らされるますなあ。ただ、どうも個人的は内容としても苦手な分野なのですよねえ(苦笑)。折しも2024年の大河ドラマは紫式部を取り上げていますから、あれこれ知る好機でもありましょうが、これも見ておりませんし…。

 

と、そんな個人的なところはともかくも、宇治橋を渡ればそこには平等院の参道が。さてと此の世の極楽浄土を拝見しに参るといたしましょうか。