メ〜テレ(名古屋テレビ)の深夜枠で放送されたというドラマ「ヴィレヴァン!」をちょびちょび見ておりましたが、

勢い余って、映画版の「リトル・サブカル・ウォーズ 〜ヴィレヴァン!の逆襲〜」も

第2シーズンの「ヴィレヴァン!2 〜七人のお侍編〜」までも見てしまったのでありますよ。

 

 

「ヴィレヴァン」というタイトルが、ヴィレッジ・ヴァンガードというお店に由来することは

今や全国の店舗数が350余りというだけに言わずと知れたことかもしれませんですが、

個人的には下北沢の本多劇場に芝居を見に行く際、開演前の時間を潰すのに寄る店であったことから、

これが名古屋発祥であるとはつゆ知らず。ま、名古屋テレビで作られたのも宜なるかなでありますなあ。

 

それはともかく、お店を訪ねたことのある方はご存知のとおり、基本的は書店という位置づけらしいものの、

置かれているものの数がものすごい。さまざまなポップがユニークだとは思っておりましたですが、

陳列する棚づくりにそもそものこだわりが凝縮しているとは、ドラマから知ったところでありますよ。

 

ということなんですが、これから書こうとしているのは日本のヴィレッジ・ヴァンガードのことではないのですなあ。

そもそも創業者がジャズ好きだったそうで、ニューヨーク・マンハッタンに数あるジャズ・クラブの中でも

最古参といわれる店「ヴィレッジ・ヴァンガード」、その名にちなんだ命名であるということなわけでして、

要するにこのジャズ・クラブに絡んだお話の方こそと思っておる次第です。

 

と言うのも、先ごろ「NHK special スペシャル」(何だかすごいタイトルですな)の、

「この素晴らしき世界 分断と闘ったジャズの聖地」という放送回を見たものでありまして。

 

ここで言う「ジャズの聖地」がヴィレッジ・ヴァンガードのことであるとは言わずもがな。

新型コロナウイルスの感染拡大により、劇場やらライブハウスでの公演が続々と中止になったのは

ニューヨークでも事情は同じ。それどころか、日本よりも反って深刻な状況であったようですな。

 

ジャズのライブハウスも軒並みクローズしていたわけですが、ここへ来てだんだんと再開し始めたところが、

老舗のヴィレッジ・ヴァンガードが開かない。どうやら老舗であるが故に換気設備などを一新しなくてはならず、

かといってそのために長年親しまれた店内のようすを寸毫も変えたくないというオーナーの心意気が

せめぎ合っていたのでもあるという。

 

そうはいっても、最も古いということは、その当時、最も先進的であったとも言えるわけでして、

90年近く前の開業時はことのほか人種差別が激しい中、黒人プレーヤーを始めて登場させたのは

ヴィレッジ・ヴァンガードであったとか。ジャズは黒人発祥の音楽でしょうけれどねえ…。

 

当時は人種差別が厳しいと言うも、全くもって残念なことながらその傾向は昨今も続いてしまっている。

コロナによるイライラは差別行為を助長させてしまっているかもしれません。そんな中だからこそ、

ヴィレッジ・ヴァンガードが再開するというのは、ある種、象徴的な出来事でもあったのではなかろうかと。

 

象徴的といえば、公演の機会を奪われたミュージシャンたちが街へ出て、

誰が火付け役というわけでもなく、ある一曲が方々で頻りに演奏されるようになったのだそうですね。

ルイ・アームストロングの「what a wonderful world(この素晴らしき世界)がその一曲です。

 

もとはベトナム戦争を繰り広げていたアメリカで、平和な世界を願って作られた歌ということですけれど、

サッチモが歌うことによって、「平和な」とは戦争の無い、と同時に人種差別の無い世界が

聴き手に思い描かれたのではないでしょうか。

 

その歌が自然発生的にニューヨークのあちこちで演奏されるようになり、ヴィレッジ・ヴァンガードも再開する。

番組に流れるサッチモの歌を聴きながら、べたな言い方になりますが、音楽は人の心に効くなあと

思ったものなのでありますよ。