例によってTV番組のお話はかなりの時季遅れ感がありまして…と、どうしても毎度断ってしまいますが、

そもそもBSでずいぶん前に放送されたものがややあって地上波に下りてくるといった関係にあるようで、

地上派放送をリアルタイムに見たとしてもすでにして遅いのですけれどね。

「早く見たい人はBS契約してください」ということでしょうけど、そう簡単に乗せられたりはしませんよ(笑)。

 

ともあれ、先日Eテレで放送された「カールさんとティーナさんの古民家村だより」を見ていて、

またもつらつらと思い巡らしをしたようなわけでありまして。

 

番組タイトル的には映画のカールじいさんを思い浮かべて、なんとなく頑固な人を想像しましたが、

実に人当たりの良さそうなひとですな、カールさんもティーナさんも。

新潟県の内陸部にある限界集落に、その土地の景観などにほれ込んでドイツから移住したお二人、

土地の人たちともとてもいい付き合いをしているようで、すっかり馴染んでおりますなあ。

 

ところで、カールさんの生業はといえば、限界集落だけに打ち捨てらた古民家を生き返らせること。

とかく古民家再生となりますと、往時あったそのままに蘇らせることを想像しますけれど、

カールさん自らの住まう再生古民家も、またその他に手掛けた古民家もそれぞれ個性的に、

生まれ変わった姿を呈しているのですな。

 

新しさも感じる外観を持ちつつ、山村にはしっかり溶け込んでいる。

だからこそ、どうしたって不便さがある場所ながら腰を据えて「ここに住みたい」と移住してくる人たちも

出てくるわけでありまして。

 

そんなカールさんだけに、「日本には(古民家という)まだまだ長く使える建物があるのに、

どうして何十年かで建て直さなくてはならないような建物を新しく建てたりしてしまうのでしょう」と、

そんな言葉を漏らすわけでして、聴いている日本人のひとりとして「そうだよなあ」と思ったり。

 

考えてみると日本古来の古い文物に関しては、その価値を改めて外国人から教えられるということもありますな。

TV番組(もっぱらテレ東かも…)でも、日本の文物を究めに来日する?外国人の姿をたくさん見かけます。

 

こうしたことからも、とかく日本人は自国の文物を軽んじる、とまでは言わないまでもあまり顧みない、

そんな傾向は確かにあるのかもしれません。戦争に負けたからという以前、明治期以来の外国偏重の思いが

強くあるのかもしれませんですね。

 

ここでカールさんの取り組みにも「そうだよなあ」と思うのも、そうしたことと関わりがありましょうか。

されど、「ちょっと待てよ」とも思い直したり。なんとなれば、建物に関して日本では確かに

スクラップアンドビルドが多いわけですけれど、「新しい」ものに清新さを感じるといった心性もまた

作用していようかと気付いたりも。先ごろあった伊勢神宮の式年遷宮や春日大社の式年造替などからも

想像できるところであろうかと思ったりしたわけです。

 

考えてみれば、江戸時代の火消しの仕事は、延焼防止のために家屋を壊して回ることでもあり、

火事ばかりでなしに地震などの災害も多発する日本で、木造家屋は(結果的に長持ちすることはあるにせよ)

長期利用できなくても仕方がないという意識があるのかもしれませんね。

もちろん、カールさんがリノベーションする古民家のそもそもの耐久性に一目置くように

最初から長持ちしないことまでを念頭にはおいていないにしても。

 

ですが、仮にそうした心性が培われてきたとして、今では木造家屋であっても

かつてほどに大火が頻発するわけではない(消防の体制が昔よりは整ってもいますし)となれば、

今こそ木造として頑丈に造った技術を活かしていくという発想転換が必要なのかもしれませんですね。

こうしたことは、何も木造家屋に限ったことではありませんで、他の文物にもおいてをやでありましょう。

 

当初は日本の文物に関して外国の方々に教わることがあるなあと思い、

その後の思い巡らしで、どうもそればかりではない部分をも考え合わせる必要もあるなと思い、

さらにはその上で外国の方々の示唆にはやはり耳を傾けるべきもんがあるとも。

まあ、何ごとも表面的な部分だけを見ていてもだめなのだろうなあと思う次第でありますよ。