…ということで、青森へ行ってまいりました。

ホテル泊は2月に新潟へ出張に行って以来ですので、実に久しぶりのことでして。

 

で、ホテル泊の常ながら夕食が付いていない。旅館じゃありませんのでね。

もちろん一泊二食という形もないではないですが、純然たるホテルの場合に夕食付は例外的かと。

 

そんなときにホテル内のレストランで夕食をすませるということもあるわけですけれど、

コロナ禍の影響でありましょう、ホテル併設の食事処がすべて休業しているという状況では

(ちなみに青森県はその人口比率において感染者数が多い形で推移しておりましたなあ)

そういう作戦に出ることもできず、必然的に外へ出ることになるわけですな。

 

と、かような事態になった際、思い出したのがちょいと前にEテレで放送されていた「デザイントークス+」、

「ライフスタイル×ホテル」ということを扱った放送回なのでありました。登場したのは

クリエイティブディレクターの岩佐十良という方でありました。

 

なんでも長野県松本市の郊外にある浅間温泉はどうにも近年さびれ気味であるそうな。

そうしたところに、敢えて新しい温泉宿を作るというプロジェクトに取り組んだということなのですが、

ほぼほぼ温泉旅館では当たり前とも思える一泊二食という形態をとらないことにしたという。

なんとなれば、宿でなんでも提供する客の囲い込みをしてしまえば、温泉街は活性しないからと。

 

つまり、ここでのプロジェクトによる新しい温泉宿では、

どうぞ温泉街を徘徊して、飲食を楽しんでくださいというのがコンセプトであると。

これってホテル(温泉地にあるホテルという名の大型旅館でない純然たるホテル)では

当たり前のことなのに、なぜか旅館ではできてこなかったことなのですよね。

 

ルーツなり、ロケーションなりの違いは大きくあるとしても、温泉旅館では一泊二食が当然とされ、

しかも夕食への力のいれようは尋常ではなく、これでもかと出てくる料理で競っているような状態。

客側としてとてもひととき温泉街を徘徊し…てな気分にはならないという以上に、

宿側がとにかく客を自分の館内だけで散財させることに執心しすぎな気もするところです。

 

必然、宿としてそれなりに繁盛するところはあっても、温泉街としての賑わいは減じることに。

結果としては町の灯の消えた、さびれた温泉街の宿となっては何となく自分のところまでさびれていくような。

山合の秘湯という一軒宿にはそれなりの風情があるもせよです。

 

つまりは「三銃士」ではありませんけれど、「One for all, All for one」なのですよねえ。

とにもかくにも競い合うという切磋琢磨こそが至上と考え方も分からなくはないですが、

蹴散らした跡には何も残りませんでした…では、おそらく本末転倒ではありましょう。

 

町に賑わいが戻る。それでこそ、それでこそそれぞれの宿も店も賑わう。

そういう発想を斬新と思ってしまうこと自体、何か毒されていたなあと、

青森のホテルで考えたりもしたものでありました。