実在のお店を訪ねるグルメ系ドラマはいろいろとあるようですなあ。
ただ訪ねるお店というのがすでに世評が高い人気店であることもあれば、
知られざる隠れ名店であることも。まあ、知られざる…とは言っても、
場当たりに入り込んで登場人物にミスチョイスだったと思わせるような仕立てはしないでしょうから、
予めリサーチした結果でしょうけれど、ドラマでは例えば「孤独のグルメ」にしても
その場であたりを歩き回って見つけたお店という体裁にはなってますですね。
たまたま津田寛治主演の「ラーメン刑事(デカ)」というドラマを見かけたのですけれど、
やっぱり唐突に巡り合った形で(自分の勘を頼りに?)店に入ってみる形でしたな。
もちろん世にラーメン好きは数多いでしょうから、「知っている人は知っている」という店なのではありましょう。
ともあれ、年間300杯はラーメンを食べると豪語するラーメン好きの刑事が仕事帰りに出くわした店に入り、
スープの成分分析に思いを巡らしてはもうひとつ何かあるはずだが分からない…と焦れるわけですが、
そんなときにつぶやく言葉が「(厨房に)ガサ入れしたい…」。
まあ、主人公を警察職員にしたことで言えるセリフではありますね。
と、そんな主人公が店主や店員ともやりとりする会話、
「このスープは…」、「この麺は…」、「このチャーシューは…」てなことを聞いていますと、
見事にラーメン欲をそそられることになるもので。
まあ、登場人物が「食べる」番組は得てしてそういうところはあるものですが
(大食い系ははおよそそそられるどころかうんざりするので全く見ませんけれど)
これまたたまたま見た映画「フード・ラック!食運」でクローズアップしていたのは焼肉。
見ていて、たかが焼肉されど焼肉なのだなあとは思いましたですよ。
飲食店に入って品物をオーダーし、「おまちどう!」と出てきたものをすぐに食する…というわけに
いかないものがありますですね。例えば鍋物、例えばお好み焼き、そして焼肉などなど。
要するに食材が「おまちどう」なのでして、自分で作らんと食べられんよという類のものがあるわけです。
これは単に食べるお楽しみというのみならず、何人か集まって卓を囲み、わいわいとやることも
お楽しみの一部として認知されているのでありましょう。
だからこそ、「自分で作るのかよ、手抜きだな」などと言う人はいないわけで。
(もっとも現下の状況にはもっとも馴染まないお楽しみにはなってはおりますが…)
ではありますが、自分で作って食すというときに、
出てきた食材をうまく調理して、本当においしい状態でいただけておるかといえば、
微妙なところではなかろうかと。鍋にはなんでも一緒くたに放り込んでしまったり、
お好み焼きは見事に!?ひっくり返し損ねたり、焼肉はともすると黒焦げのまま放置していたりと。
それでもわいわい感の方で楽しんでいるのであるとすれば結果的な満足感に支障無しとも言えましょうけれど、
こと「おいしく食べる」ことに着目すれば、「食材さん、ごめんなさい」状態なのかもしれませんですね。
ほとんど焼肉屋に行くこともなく、焼肉自体をさほど食することもない方ですので、
焼肉ったらそんなものというふうに思っていたわけですが、「フード・ラック」を見ることで
異世界を覗いた気にもなったものです。
何しろ肉の部位というか、種類というか、それによって最もおいしさを引き出す焼き方があるとか、
そういうこだわりを考えてもみなかったものにとっては、口あんぐりにまでなってしまいそう。
確かにそういう食べ方をすればうまいのであろうと思うところながら、
その食べ方を客に求めているとすれば、なかなかに厳しいものがありますものね。
里山歩きを楽しんでいただけの人が、やおら冬の剣岳には行ってはいけない。
そんな感じでしょうかね(?)。
あまり「食」へのこだわりが無い者としては、
こんなところにもマニアックな(そう思えてしまうわけで)人たちがいるのだなあと気付かされるわけですが、
まあ、映画のお話としては下町の個人商店的焼肉屋さん絡みの人情感あふれたところもあり、
これはこれで面白く見たものでありました。ちなみにダチョウ倶楽部の寺門ジモンの監督作だそうでありますよ。