マツコ・デラックスが出ているTV番組だかで、先ごろスパゲティ・ナポリタンを取り上げていたそうで、
これを見てナポリタンが食べたくなったという声を聞き及んだのでありますなあ。
個人的にはナポリタンはもう学校給食でもって一生分食したような気にもなっておりまして、
それほどにたびたびで給食で出たわけではありませんけれど、あのどでかい寸胴鍋から
どさっどさっとアルマイトのお皿に盛られるのを(さほど美味しいと思うこともなく)ひたすらに
量を食べたように思うものですから。
思い返してみますと、昭和のひと頃まではスパゲティといえばナポリタンとミートソースしかなかったですな。
学校給食でナポリタン、自宅ではルーミックのミートソース、これがすなわちスパゲティの全てだったわけで。
そんなことからナポリタンのみならず、ミートソース(今ではボロネーゼというのかも)の方も
今敢えて食べようという気にもならないところでありますよ。
さりながら、先の番組を見てナポリタンを食べたくなったという当人と連れ立って、
国立市の富士見通りにある喫茶店へと出向いてみたのでありました。
「すみれ珈琲」というこのお店、駅前というにはちょいと散歩となる微妙な距離にありますが、
お店の入り口の扉からしてすでに、これと同じお知らせが貼られているのですよね。
「やっぱりスパゲティといえばコレ!!喫茶店の大定番 すみれ特製ナポリタン」と。
ここを訪ねた理由がお分かりいただけようかと。
ですので、当然にまずはこちらをオーダーするわけですな、
食べたいと言っていた者がおるわけですから。
全くもっていかにもなスパゲティ・ナポリタン。
先頃見ていたイタリア映画の中で、ローマのトラットリアに入ったアメリカ人に
「ケチャップはないのか」と尋ねられるボーイの姿が出てきます。
客に背を向けて「ち!」と舌打ちしておりましたけれど、
イタリアには立派に?サルサ・ポモドーロがあるのに、ケチャップかよと。
というほどに、はっきりしたケチャップ味のスパゲティ・ナポリタンは
その名と裏腹に日本で作られた料理であるとは、誰もが知るところでありますね。
とまれ、上の写真の見た目以上に盛りのよかったナポリタンを少々お裾分けに預かりましたが、
さすがに?学校給食とは違う味であるなあと。給食ではもそっと甘い感じでしたが、
こちらの特製ナポリタンは酸味が勝った大人の味とでもいいましょうか。
「あの頃を思い出すわ~」などと言う言葉も貼り紙にはありますけれど、
昔を想う青春の味はやはり酸っぱいものでもありましょうかねえ。
ところで、先にも申したとおりに個人的にはナポリタンは食傷気味…であるところから、
もうひとつの喫茶店定番と思しきメニューを頼んでみることに。エビピラフでありますよ。
かような懐かしい品々を食しながら思うところは、
かつて洋風料理を手軽に食べられる場所はひとえに喫茶店であったなあと。
ガストだとか、サイゼリアだとか、そういうお店が全くない頃のことです。
スパゲティもピラフも珍しかった。ハンバーグはマルシンのこそ本物と思っていた。
そんな当時、本格的な西洋料理は(今も同様ですが)敷居が高い中で、
喫茶店では洋風のカタカナ料理を手軽に楽しむことができたのですよね。
町中に洋食屋なるものはあっても、その手のお店はもっぱらフライ、揚げ物でしたし。
そんな喫茶店は当時にあって貴重な存在だったのかも。
そして、その貴重な存在は今や稀少な存在になりつつあるのかもですねえ。
ドリンクには、これまた喫茶店然としてクリーム・ソーダ.。
(そういえば、レモンスカッシュなるものと初めて出会ったのは喫茶店ですなあ)
この手の喫茶店はやはり個人商店であるところが多いですから、
先行きに危ぶまれるところはありますけれど、店内にいてこれほど懐かしいことのあれこれを
思い巡らすことのできる場所はそうそう無いように思いますですね。