先んじて見たばかりですので、ついつい映画「ネクスト・ゴール!」のことを思い出したりして。
あたかも「ネクスト・ゴール!」の音楽版かなと思ってしまうフランス映画「オーケストラ・クラス」なのでありました。
南米ベネズエラに「エル・システマ」という音楽教育プログラムがあることはよく知られているところで、
気鋭の若手指揮者グスターボ・ドゥダメル(といってももう40歳にはなるわけですが)もこのプログラム出身。
ですが、フランスにも「デモス」という音楽プログラムがあったのですなあ。
フライヤーの裏面にはこんな説明がありましたですよ。
フランスで2,000人以上が体験した実在の音楽教育プロジェクト「Démos(デモス)」。音楽に触れる機会の少ない子供たちに、無料で楽器を贈呈しプロの音楽家が音楽の技術と素晴らしさを教えるこのプロジェクトは…大きな話題になっている。
パリ19区(移民が多く住んでいるエリアであるようですね)の小学校に、
ヴァイオリン携えた一人の男性が現れるところから話は始まりますけれど、
言うまでもなく「デモス」のプログラムによる音楽の授業を指導する役割ですな。
このシモン先生、教室に入って即座に目を丸くしたのは生徒たちのやかましさ。
話を聞かないのはもとより、ひと言言えば戯言が倍になって返されるという始末ですので、
ただただヴァイオリンを教えるものとして、受け手は当然にしてヴァイオリンを習う意欲があるのだろうと
思い込んでいたことが一瞬にして崩壊させられてしまうのですなあ。
「とてもじゃないが、やってられない」早速にシモンは思うわけですね。
ちょうどフリーであったことからプログラムの音楽指導を引き受けたものの、
弦楽四重奏団の第2ヴァイオリンのポストがオファーされそうな状況でもあっただけに、
プログラムの契約はあっても気持ちは揺れるシモンではありますが、
反抗ばかりして少しも練習が進まない中にあっても、音楽に、ヴァイオリンに対する生徒たちの思いの萌芽を見て、
指導を続ける決意をするわけです。
プログラムには年に一度、パリ管弦楽団の本拠地フィラルモニ・ド・パリでの発表演奏会が設けられており、
シモンの生徒たちも、練習は不十分ながら他校の生徒との合奏練習に臨むことに。
結果は惨憺たるありさまで、「ネクスト・ゴール!」との例えではありませんが、
あたかも米領サモアのチームがオーストラリア戦で0対31という大敗を喫したときのような気分ではなかったかと。
まあ、勝負ごとではありませんから、そこからスポ根まがいの特訓が始まり…とはなりませんが、
それでも生徒たちの心にも火が灯ったのでしょうなあ。仲間のひとりが住まう住宅の屋上で自主練が始まるという。
もっとも、そこでも何かにつけて口喧嘩が始まり、練習にならない…という体たらくではありますが。
ここから先はいわゆる「感動作」にありがちな展開で、ほかにも練習場が火事で無くなってしまったりという
ハプニング続出ながらも、たどり着いたフィラルモニ・ド・パリでの演奏会、場内は熱狂の嵐に包まれる。
そうした話の流れはとうに知れてはいるものの、ここでもまた努力の過程には心動かされてしまいますなあ。
ところで、発表会での演目というのがリムスキー=コルサコフの「シェヘラザード」で、
この曲、ちょっと楽器をかじった小学生が演奏できるのであるか?と思ったりもするところながら、
ここに聴かれるヴァイオリンの美しいメロディーこそが、反抗心だらけの子供たちに
練習を続けさせる源となったかもしれませんですね。映画のオリジナル・タイトルは「LA MÉLODIE」でありましたし。