もっぱらNHK-BSで放送されているようで、未だBS設備の無い者には見られないのですが、
「グレート・トラバース」というドキュメンタリー番組がありますですね。
かつてどこかしらに出張した際にホテルでそのBS放送に接し、「なんだこの人!」と思ったものでして。
ちょうど今、その番組は地上波NHKで15分単位のミニ番組となって毎週放送されているものですから、
ついつい見てしまっているのですなあ。
その「グレート・トラバース」とはいったいどんな内容の番組なのかと申しますれば、
AmazonのDVD紹介ページでは、このように。
深田久弥「日本百名山」が出版されてから五十年。
日本百名山すべての頂を登り、その間、一切交通機関を使わず、自分の脚とカヤックだけでつなぐ、途方もない挑戦が始まる。「日本百名山完全人力一筆書き踏破」に挑むのは、日本を代表するプロアドベンチャーレーサー田中陽希。2014年4月1日屋久島・宮之浦岳からスタートし、北海道・利尻島の利尻岳まで総移動距離7,800km、累積標高10万mを、およそ200日間で踏破することを目指す、前人未到のチャレンジに完全密着!
2014年以降、これが今では二百名山、三百名山の踏破まで進行中であるとは、
いやはや何と申しましょうか。何しろただ山に登るだけでも大変ですのに、
山と山との間の移動が歩きというのですから、驚くべきことではなかろうかと。
江戸時代以前の基本的な移動手段は徒歩なわけで、先に新選組巡りをした際に触れましたように
佐藤彦五郎は日野から江戸市中・市ヶ谷の試衛館道場まで通うのにせっせと徒歩で出掛けたでしょうし、
逆に近藤勇や沖田総司は江戸方向から日野へと歩いて出稽古に来ていたわけで。
さりながら、全国津々浦々を歩き回った伊能忠敬でさえ、山には登っていないわけで、
この田中陽希という人、何とも途方もないことを考えたものです。
で、実際にやり遂げてますし。
ところで、この挑戦者の肩書といいますか、職業といいますか、
そもそも「プロアドベンチャーレーサーってなんだ?」と思うところでして、
単なる冒険家、というのとも違うのでしょうなあ。
まずもって「アドベンチャーレース」というものがあり、
これのプロ(つまり職業にしているのでしょう)であるからという肩書ですが、
では「アドベンチャーレース」とは…ですが、日本アドベンチャーレース協会によればかような。
アドベンチャーレースは、自然の中に設定された難コースをチームワークで突き進んでいくアウトドアスポーツ競技です。
だからといって、この競技に取り組んでいる人ならば誰でも出来ることなのかといえば、
そうではないと思うところなのですが、どうでしょう。そうとばかりも言えないのかも…。
と言いますのも、本人はひいひい言っているのでしょうけれど、画面を見ている分には
さっさかと山々を次々に踏破していく姿には爽快さもあって見入ってしまうわけですが、
そうした映像に見入っていられるのも、それを撮影する人がいるからでありますね。
で、言いたいことはですね、さっさか山を上り下りする田中に、カメラが常に寄り添っているということ。
山と山の間の公道歩きにまで付き添うことはないにしても、いちばんしんどい山の上り下りに
カメラは遅れることなく付いていく。これ、すごいことではありませんか。
とまあ、すごいすごいと言ってTVを見ているだけというのもなんですから、
百名山とはいわずとも山歩きがしたくなってきますなあ。
季節は良し、ですが外出には不自由さが伴う状況はまだまだ続きそうな気配であるのが
なんとも悩ましいところです。