この間は「嘘」のことに触れてあれこれ申しましたですが、確かに「嘘」にもいろいろある。
故意に虚偽を語る、そのこと自体が目的であることもありましょうし、
心のうちの何かを隠したい一心であることも。
相手の発したその言葉の真意がどうであるのか、これを知るにはひたすら冷静に傾聴することでありましょうか。
時には、先に見たドラマの登場人物のように騙しにかかる向きもあるわけで、そこはそれ、聴くにあたっては
単に「傾聴」でなくして、聴くに際しての冷静さもまた肝要であろうと思ったりしますけれど、
映画「ショート・ターム」を見て、その「聴く」ということの難しさ、とても難しいのだよなあと改めて。
お話はといえば、Amazonの紹介ページによればこんな具合です。
家庭や心身に問題を抱える子供のためのグループホーム「ショートターム12」で働くグレイス(ブリー・ラーソン)。グレイスは、新入りのジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女を担当することになる。グレイスは施設の同僚メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と付き合っていたが、ある日、妊娠していることが分かり、二人の将来はささやかながらも幸せになるものと思われました。そんな中、グレイスはジェイデンが心の奥深くに閉ざしていた事実に気付き……
入所している子どもたちの状況はさまざま。
あらすじにあるジェイデンばかりに構ってばかりもいられない毎日なわけでして、
そのひとりひとりに目を配り、寄り添い、耳を傾けて、時に真実(であろうこと)に向き合う日常ですね。
こうした環境にあるグレイスやメイソンたちは、どうやって自分たちの心の平穏を保つのだろうと、
この映画に限らず、いわゆるカウンセラーや精神科医という職業の人たちは
どうやって自らのプライバシーを確立しているのでありましょうか…。
職業上、「傾聴」は大切なことのひとつで、繰り返しになりますが冷静に、
つまりはあまりに感情移入しすぎずに聴くことが大事ですよね。
ですが、寄り添う相手と「共にいる」感覚が強ければ強いほど感情移入して
ともすると「我がこと」として引き取ってしまうようなことにもなりがちかと。
映画の中でグレイスの行動もそれに近い状態と見えるところがありますけれど、
どこまで「引いて見るか」にはっきりした境界線などあろうはずもなく、
常に自己分析の必要も生じているのではなかろうかと思うところです。
そんなふうに考えたときに、こうした仕事の難しさが偲ばれるのですよねえ。
まったく違うレベルの話ですけれど、仕事上の電話で時に、何がどうわからないのかという整理をつける以前に
「わからないんですけど…」と問いかけてくることに出くわしたりします。
こうしたときに「わからない」ことを丸投げされても、こちらの方でも「何がどうわからないのか」はわからないわけで、
ついついイラっと感が俄かに萌したりする。すぐさま、いかんなあ…と思い返すのですけどね。
「傾聴」のことであるとか、先にも触れたような想像は些かなりとも働かせてはおりますので、
かくあるべしといいますか、かくあらぬべしという言動には気に掛けているのですけれど、なかなか。
まして、なにかしら面倒なやりとりがあったときに、それはそれとしてすぐさまスイッチを切り替えられるかどうか、
この辺りが自分が取り込まれてしまわないポイントなのでしょうけれど、難しいものです。
この程度のことでかような思い巡らしをしたりするものですから、
やはり映画に見たような仕事は難しかろうなあと。
もっとも人は一様でなくして、それぞれに得手不得手もありましょうから、
一概に「自分にはできない…」と思い込むのでなくして、
他の人が不得手かもしれないことをやっている(本当にそうであるかはともかくも)と思えば
精神安定にはいいかもしれませんですね…。