4月1日、エイプリルフールですなあ。
そも流行りものの出どころが不明…とはよくある話ですけれど、
この世界的な風習(?)もまた発祥がよく分からないそうですなあ。
昔々のインドだとか、古代ペルシアだとか、はたまた中世ヨーロッパであるとか。
いずれにせよ、長い時間をかけて世界中に広まったのでしょうかね、
日本に伝わったのは大正時代だといいますから、さほどの歴史があるわけでもない。
そのわりにはすっかり「嘘をついてもいい日」と、すっかり定着しているような。
ですが、この「嘘をついてもいい」というのはどうやら誤解でもあるようで、
「大袈裟なジョークもOK」というくらいが本当のところらしいですなあ。
新聞の一面に「ん?!」という記事が載ったりしますですが、
まことしやかではあっても、ニヤリとさせる工夫が感じられるジョークを楽しむ日ということで。
日本には「嘘も方便」という言葉があるように「使い方次第では嘘もやむ無し」という雰囲気がありますが、
もちろん類似表現は他の地域にもあるようですが、日本ほどには寛容ではないせいか、
わざわざ罪のない嘘に「a white lie」と区分けて言う表現があるようですね。
とまあ、エイプリルフールという折からこのところ見ていた英国のミステリードラマ、
「警視バンクロフト」を思い出したりもしておりました。
シーズン1では敏腕警視のエリザベス・バンクロフトが過去に自ら関わった事件の隠蔽のために、
また麻薬密売組織との取引によって自らの手柄を虚飾するために、嘘という以上の強硬手段を講ずるという、
警察官そのものが悪の根源といった形で描かれるわけですが、当初から話題にしている「嘘」との関わりを
思い出させたのはシーズン2の方でして。
善し悪しはともかく警視から警視正に昇進を遂げていたバンクロフトに、
愛してやまない一人息子ジョーが殺人事件の容疑者として追われることになるという試練が降りかかるのですな。
ジョーが殺したとされる被害者は彼のフィアンセであるアナベルの父母、資産家でもあるために騒ぎは大きくなり、
これから一時退避とジョーとアナベルは身を隠すのですが、やがて見つかり取り調べを受けることに。
そこで浮かびあがるのはジョーとアナベルの証言がことごとく食い違っていること。
息子を信じるあまりに私情を挟み過ぎとされたバンクロフトは捜査から外されているのですが、
(この息子思いのあまりと見える暴走ぶりは何ともすさまじいものがありましたなあ…)
ジョー可愛さから独自にアナベルへの探りを入れていくと…、
思わぬ(というより予想取り)の展開が待ち受けておりましたよ。
ネタバレせずには書けませんのでご容赦願うといたしまして、アナベルの嘘、というより
それを相手に信じ込ませてしまう話術、そして(ドラマの中の人物としての)演技力、
これには実に邪悪な印象がありましたですよ。
この手の、虚言で人を操る人物は登場するのは映画やドラマにもよくあることではありますけれど、
人を丸め込んでしまう言動を自覚的に構築して実行することに、改めて非常な悪意を感じてしまったもので。
人間の心理を理解すれば、そうしたことも可能なのでしょう。
ともすれば「騙される方が悪い」という理屈のあらゆる詐欺にも共通の意識があるかもしれませんけれど、
一方で「嘘も方便」的な考え方もあろうかと。もっとも、この場合の方便がもっぱら嘘をつく側だけにとっての
方便でしかないわけですけれどね。
ということで、よく出来た話とは思うものの、決して後味はよろしくない(と個人的に)。
やはり「嘘」というものが纏うネガティブなイメージが強いからでしょうか。
そんなことから翻ってみれば、「a white lie」という区分けた表現もなされない日本においてはなおのこと、
エイプリルフールを「嘘をついてもいい日」とするのはやめにして、「ジョークを楽しむ日」てなことに
軌道修正した方がよろしいのではなかろうかと思ったりしたものでありますよ。
まあ、エイプリルフールといって仲間内で言い交されるのは他愛もない嘘なのではありましょうけれど。