昨日(3/8)の東京新聞夕刊で「豚骨ガラお宝 福島原発汚染水浄化に一手」てな見出しを見かけたのですな。

原発事故で問題になっている放射性物質にストロンチウムというのがあるようなのですけれど、

本来であれば捨てるしかない豚骨ガラ(豚骨ラーメンのだしガラとか)にストロンチウムをたくさん吸着させる方法を

日本原子力研究開発機構と東大の共同研究グループが見つけたようで。

 

なぜ豚骨が…?という理屈はあちこちのWebサイトで見ることができますので端折るとして

(そもこの手の理系ネタはうまく説明できない可能性がありますので深入りは避けるとして)

相変わらず汚染水出しまくりの福島原発の事後処理に画期的ともなる方法が見出されたことには

「ほおほお」と思うところでありますね。

 

なんでも豚骨ガラは「世界で年約七十五億トン発生している」と言うことですので、

こうした廃物を有効活用するという点で、ひとつ「良し」とは思うわけです。

そして、豚骨ガラに手を加えたものをストロンチウムの吸着剤とする場合、

これまでに使用されてきた吸着材の20倍の効果があるらしい点もまたひとつ「良し」ですな。

 

かように高性能の吸着力を持つということは(と、この部分は東京大学大学院理学系研究科HPからですが)、

「汚染水の浄化、土壌に埋めることで汚染物質の地下水や海水への流入を防ぐ技術、

また、有用金属回収技術への活用が期待され」ることになり、こうしたことを聞かされる限りでは

なんとまあ役に立つものを見つけたことかと思ったりも。

 

ですけれど、よおく考えて見れば「ちょいと待てよ」となりませんでしょうか。

要するに人体にとって(のみならず自然環境にとってもでしょうけれど)きわめて有害なストロンチウムを、

豚骨に吸着させることによって土壌汚染や水質汚染を防げること自体をとやかくいうつもりは無いものの、

ストロンチウムをいっぱい吸わせた豚骨ガラはどうなってしまうんですかね。

どう処分することになるのでありましょうか…。

 

考えがここまで及んだときに思うことは、原発を稼働させて出続ける核廃棄物をどうするの?ということと

似たような話になって来るような気はしますまいか。

 

奇しくも同じ新聞には、河合弘之というさんざん巨悪の味方であるかのような活動をしてきた弁護士が

手のひら返しに環境問題に目覚めた半生を振り返る連載コラムが載っているのですけれど、

折しも目覚めたとき(?)の思いとして、こんなことが綴られていたのですなあ。

重大事故を起こすと途方もない災害をもたらす、事故なしでも使用済み核燃料を後世に押し付ける。非論理的であり、非常に犯罪的な最大の環境破壊です。

多くの人々が風化させてはいけんと思った重大事故も、残念ながら10年という時が経つと薄れが生ずることもあり、

しらっとあちこちで原発を再稼働させたがる傾向が出てきたりもしていますけれど、

事故という重大事を忘れてはならない一方で、仮に事故が無くとも核廃棄物が出続けることを

いささかも失念してはいけんのではないかと思うのですよね。

 

にもかかわらず、目の前で続く福島原発の事後処理に朗報!てなことが喧伝されると、

「これで安心」といった誤解をミスリードすることにもなりかねない。

今回の大発見も原子力機構がらみだとすると、どうも原発利用から脱する発想は出て来ない中でも

新機軸なのかなと思ってしまったりするところなのでありますよ。

 

以前、フィンランドにある「オンカロ」という核廃棄物の最終処分場に関するドキュメンタリーを見たですが、

フィン語でオンカロは洞窟の意であるごとく、フィンランドでは地中深くに核のゴミを埋めることにしたとか。

 

全長45キロにもなるという長いトンネルにがちっとした格納容器に入れた核廃棄物を入れて埋める。

あたりは乾燥した岩盤の地形で水分による腐食の恐れが少なく、また彼の地には日本のような地震もない。

だから大丈夫という判断をしたようですけれど、長い長い年月にわたって影響を及ぼし得る物質なだけに、

いつなんどき未来の誰かが「パンドラの匣」を開けてしまったりする危険性はないのだろうかと思ったものです。

意図的に開けるのでなくとも、何百年スパンで考えると危険物が埋まっていること自体

忘れ去られてしまうかもしれない未来にまで、こうしたやっかいものを預けるというのはどうよとも。

 

折しも、東日本大震災、福島第一原発事故から10年となるいう時期に、

振り返り思い起こすべきことは多々あろうと思いますけれど、

すっかり忘れてしまってるんでないというか、敢えて目をつぶっているのでないかい?というような人たちが

むしろ国を動かしているような気もして、暗澹たる気持ちになったりもしたのです。

 

ところで、対症療法とはいえ、現実にあるストロンチウムの吸着には豚骨ガラが必要として、

豚骨ラーメンを食することが貢献に繋がるのかと思ったもしますですが、

食べ過ぎてしまいますとこれはこれで人体に影響がありそうな。ほどほどがよろしいでしょうなあ。

 

おそらくは原発も発電効率がすごくいいのでしょう。

エネルギー貧困国としてはその点に眩惑されて他のデメリットは見ないようにしてきたのでしょうね。

まあ、それに限らず近代・現代は効率がいいと思われる方向へひた走り、社会システムもなにも

みなその方向にあったのは、昨日触れた『資本論』の話とかぶってもくるような。

ここでもやはり、ほどほどを考えることがよろしいのではなかろうかと…。