♪こんなこといいな、できたらいいな…とは思っても現実にドラえもんがいるわけではありませんから、

そうした日々思う「必要」が何らかの発明につながる源泉になると考えたのがエジソンだったのでありましょう。

確かに必要性は発明を後押しすることにはなるわけで、よく言われますように戦争中には科学技術が進歩するとは

本当のことなのでしょう。兵器などの性能向上に「もっと、もっと」という必要性が生ずるわけで。

 

確かに結果として科学技術は進歩して、後世にその恩恵が無いわけではない。

広島県呉市の大和ミュージアムに連れられて行きましたときに、当時世界最大級の戦艦であった「大和」の建造技術は

その後の造船その他の工業技術にかくも生かされています的な話があって、

「そりゃ、そうだろうけど…」とは思いつつもなにやら微妙な気がしたものでありましたよ。

 

とまれ、「必要」の元となるものが、一般大衆の思う「できたらいいな」とは別次元の、

例えば国家的な要請や君主の無茶ぶりで生まれ、結果的に科学技術が進歩することがあるのは

戦争のみならずであるなと、Eテレ「地球ドラマチック」でちょいと前に放送された

「ベルサイユ 噴水庭園の建設秘話」を見ていて考えたのでありました。

 

ヴェルサイユ宮殿(NHKでは相変わらず「ヴェ」は使ってませんですね。ベートーベンと言ってますが、それはともかく)は

ルイ14世が建てた(建てさせた)とはよく知られるところですけれど、広大な庭園には数々の噴水があり、

その噴水のための施設・設備造りには宮殿の建設費全体の4割にもなったという話でありました。

 

ヴェルサイユを訪ねたのはもはや数十年前になりますのでほとんど覚えていませんし、

地形のことまで考えたことはありませんでしたが、どうやら台地上にあって、水利を得るには難しいところのようですね。

元々は先王ルイ13世が狩りをしにくるときのために作らせた館があったということですので、

森の中にぽつんと(それでも大きなものではあったのでしょうけれど)佇む建物だったのでしょう。

 

かつてドイツのライン川を見下ろす高台の森の中を逍遥してたどり着いた建物が狩りの館だったことを思い出しますな。

もちろん、フランス王家の狩りの館はそれなりの規模だったでしょうけれど…と、それはともかくとしてヴェルサイユの噴水、

ルイ14世としては相当にご執心であったようす。

 

王のもとで大蔵卿を務めていた二コラ・フーケがこだわりある贅沢好きであったようで、自邸の庭に噴水を造り、

ルイ14世に見せ(びらかし?)たのですが、これがルイ14世に火をつけたようですなあ。

当然にして王たるものが造る噴水はもっともっと壮大でなくてはいけんてなもので。

 

ちなみにこのフーケ、役職を利用しての蓄財(要するに私腹を肥やしていたということですかね)があって

邸宅やら噴水やらも造れたわけですが、王の怒り(不正の蓄財故か噴水などへの嫉妬か)を買ってしまうのですな。

 

それはともかくとして、水利を得るには難しい立地のヴェルサイユに水を供給するシステム開発がのため、

多くの学者や技師が集められることに。何しろ王命ですから、失敗しようものならどんな災難が降りかかるか…。

智慧を出せと言われた方も戦々恐々であったことでしょう。

 

そんな中では、ある程度の水を確保したものを庭園内にある噴水を一斉に噴出させるには足りないがため、

苦肉の策としてルイ14世が噴水を見て回る順に噴き出させるよう図らったこともあったようですが、

これに気付いた王が満足するはずもありませんですねえ。

 

とまれ、そんなこんな数々の工夫が凝らされた結果として、庭園地下には広大な水路網が出来上がっているとか。

それが何世紀にもわたって使いまわされている(当時のままを保ちつつ修繕するのも、今となっては大変そうです)とは

大変なことですなあ。されど、ルイ14世のむちゃぶりによる技術革新はその後の時代に貢献するところもあったでしょう。

だからといって、むちゃぶりが良いとは言えないのですけれど…。