さて、房総半島を外房から内房へと回り込み、岩井の海岸を見晴らす宿で一泊いたしました。
眺めとしてはこのような感じです。
うっすらと対岸の建物群が見えているように思うのですが(と、写真ではおよそ判別しがたいでしょうけれど)、
果たして三浦半島の突先になるのでしょうか。地図を見る限り、微妙な気もしますが…。
一方で山側の方を見渡しますとこのような眺めでありまして、
目の前に緩く広がる山塊の中央に見える双耳峰が富山であると思われます。
ちなみにこの富山、「とやま」とはいわず「とみさん」と読むのでありますよ。
もう30年以上も前のことでうろ覚えではありますが、確かこの山には一度登ったことがあるような。
この山ともうひとつ、近くにある伊予ヶ岳とに登ったのですけれど、
この伊予ヶ岳は一名、千葉のマッターホルンとか房総のマッターホルンとか呼ばれているという。
そんな呼ばれようからするとたいそう険しい山を思い浮かべるところながら、実は標高としては336.6mしかない。
富山の方が349mと少し高いくらいですな。ま、頂上近くが岩峰で、千葉県内ではただ一つの「岳」なのだそうです。
とまれ、そんな山行の途中、富山の登り口あたりには「伏姫籠穴」という史跡(?)があり、
近くにある岩婦温泉には伏姫荘という宿があるのですな。
(当時の山行で泊まったのは岩婦温泉岩婦館でしたが、こちらは廃業してしまったようす…)。
そんなこんなで富山は「南総里見八犬伝」ゆかりの山なのでありますよ。
(言い忘れましたが、伏姫とは安房の領主・里見義実の娘として八犬伝に登場する姫君ですね)。
と、そんな富山をあとにして、房側の海岸線をしばし北上しますと鋸南町(きょなんまち)に入りますが、
(途中には頼朝上陸の地というのがあって気に掛けていたのですが、通り過ぎてしまい…)
道の駅きょなんでちと車を停めたのですな。
もちろん道の駅がお目当てではないのでして(と言ってしまっては失礼とは思いますが)、
とりあえずこちらの像をご覧くださいまし。肩越しに後ろを振り返る女性の像です。
この図像は「なんとなあく見たことある」という方もおいでと思います。
ずいぶん昔のことながら切手にもなって(えらく高値がついたり)もしていますし。
原画は菱川師宣の作「見返り美人図」、このような絵ですが、あらら、写真は反対側から撮ってしまった…。
ところで、道の駅きょなんに「見返り美人」の像があるのかと申しますれば、
菱川師宣は安房国保田の生まれ、つまりは現在の鋸南町にとって郷土が誇る浮世絵師なのでありますよ。
で、ここには菱川師宣記念館があり、ここに立ち寄るべく目論んでおりましたところ、肩透かしを食って…。
閉じたシャッターの貼り紙に曰く「館内工事のため令和2年3月30日(月)まで休館いたします」と。
ただ、館内工事と言いながら、周囲をさらりと見回ったところ、外側にもダメージがあるようす。
つうことは、昨秋の台風15号、19号による被害はこうしたところにもあったのですなあ。
工事が終わって再び開館となる頃、心おきなく旅ができるような状況になっておりましょうか。
観光に頼る部分が頼れないことになると、それはそれでダメージになることもあるわけで、
昨今の新型コロナウイルスの状況がとにかく早く収束に向かってほしいと切に願うばかりです。