長瀞にやって来たのですから、「ブラタモリ」よろしく河原に出て地層を眺める…といった方向に
迎えないのが、足元不如意な両親ともどもであること。長瀞の自然に触れるためには
河原に出るのでなくして、河原のすぐそば、埼玉県立自然の博物館を訪ねたのでありました。
入口に至る通路にはひっそりながらとながら大きな岩で
「日本地質学発祥の地」を示す碑が建てられておりました。
明治10年(1877年)、東大に地質学科が創設され、早々の翌年には
お雇い外国人の教授であったハインリヒ・エドムント・ナウマンが調査で長瀞に入り、
以来として多くの地質学者がここでの調査研究で育ったことから
「発祥の地」と言われているそうな。
ナウマン博士の名前は「ナウマンゾウ」の化石の発見で有名ですなあ。
ですので、博物館の館内でこうしたものに出くわすと「やはりあの!?」と思ってしまいそうに。
ですが、これは「ナウマンゾウ」ではなくして「アケボノゾウ」の骨格であるとか。
ナウマンゾウやマンモスなどよりも古い時代のステゴドンというゾウの仲間であると。
もっともステゴドンてな名前を聞くと、ゾウというより恐竜っぽく思えるような。
こうした古代生物の化石のうち、長瀞近辺でもっとも注目されたのはこちらでしょうか。
「パレオパラドキシア」という名前ですが、お気付きになることがありましょうか。
長瀞への交通として利用される秩父鉄道で観光客に人気なのがSLですけれど、
SLが牽引する列車に付けられた愛称が「パレオエクスプレス」なのですから。
「パレオ」は古いことを表し、「パラドキシア」は英語のパラドックスと同じで矛盾の意味。
つまりは矛盾した古代生物という名前が付けられているわけで、
骨格だけでは想像がつかないかもですが、これ、海で生きていた生物だそうなのですよ。
その点、ジュゴンやマナティーと似たところがあるのは頷けるところながら、
そうした仲間としては矛盾してしまうような要素も併せ持っているのが特徴jとか。
そんな謎に満ちた古代生物の化石ですが、日本で発見されたもののうちの4割は
埼玉県内で見つかったということですので、まあ、秩父鉄道も看板にしたのでしょう。
(福井が恐竜で勢いづくようなものですね)
で、謎の海洋生物の化石が見つかるのだとなれば、
こうした一見して海の生物と見えるものの化石が見つかっても不思議はないわけですなあ。
まるっきり「ジョーズ」としか思えないわけですが、
この巨大ザメはカルカロドンメガロドンという歴とした古代生物。
体長12メートルとは実に巨大。恐竜もサメも古代サイズはビッグでありますなあ。
(もっとも見つかったのは「歯」であって、顎全体は再現のようですけれど)
とまれ、そんな具合に海生生物やら巨大ザメやらの化石が発掘されるということは、
海無し県と言われる埼玉は当然にして、昔々には海があったということになりまして。
約1500万年前くらいまでは「古秩父湾」という海の一部が辺りを覆っていたそうなので、
海の生き物の痕跡が見つかっても何ら不思議はないわけですが、
外秩父山地より東側が隆起していったことによって湾は消滅したという。
それでも今の埼玉県の東側にあたる平野部は
荒川や利根川が運んだ土砂が堆積して、形成されていったということですので、
成り立ちからして川の氾濫に弱いのもむべなるかなという土地柄なのでしょうなあ。
ということで、地質学に目を向ける以前に考古学的な方向で終始してしまったですが、
その後に入った長瀞の宿から見る荒川の岸は見事な縞縞模様を呈しておりました。
有名な岩畳はじめ、地質学的な見所(?)はまた別の機会に
見て廻ることにするといたしましょう。