さて、INAXライブミュージアム の中でメインの施設、世界のタイル博物館の探訪です。
まず1階の展示室には、世界の様々な場所の「タイルが使われていた空間を再現」していると。
関連する2階の展示物も含めて見ていくことにいたします。


壁装飾の原点は古代メソポタミアのウルクに?

最初に「壁装飾の原点」として登場したのは、古代メソポタミアの都市国家ウルク。
紀元前3500年頃という大昔にも建物の土塁を装飾する工夫が凝らされていたのですなあ。


色違いの円形を配することで幾何学模様を生み出していることは
なんとか上の写真で見てとれようかと思いますけれど、実はこの円形を生み出す素材は
「クレイペグ」というくさびのような形をしたやきものなのだとか。


クレイペグ

色違いのクレイペグを土壁にひとつひとつ(当然にして手作業ですな)埋め込んでいって、
幾何学模様を描きだしたということで。


世界最古のタイルはエジプトに?

続いては「世界最古のタイル」登場、紀元前2650年頃のエジプトです。
「世界最古のピラミッド」とも言われるジュセル王の王墓に地下空間にある扉に
最古のタイルは使われているのだそうな。


世界最古のタイル

青っぽい発色の名残りが見られるものもありますけれど、
「青」は「生命の色」として王の再生を願って使われたようですね。
一方、裏返しになったタイルをみると、貼り付けた壁面から剥がれ落ちない工夫らしきものが
見られます。先のクレイペグに比べ装飾に活かされる面が大きくなった分、
手作業はいくらか軽減されたことでしょう。


イスラム建築のドーム天井

時代は一気に飛びまして9世紀、イスラム教のモスクなどに見られるドーム形の天井です。
小さなタイルを組み合わせて繰り返し使用することで生まれるリズムは
ミニマルミュージックのようでもありますね。


モロッコのカットワークモザイク

モロッコでは今でも昔ながらの手作業でカットワークモザイクが作られているということです。
と、お次はまたずいぶんと時代が飛びますが、17~18世紀のオランダへ。



普通の住まいでタイルが使われるようになったことを示しているわけですが、
フェルメールの「牛乳を注ぐ女」でも、こんな足元にタイルが描かれておりましたなあ。



それを再現してちゃあんと足温器まで用意するとは、こだわりが感じられるではありませんか。
タイルの絵柄としてはブリューゲルが一枚の絵にたくさん描き込んだような子供の遊びを
シリーズ化してあるもののようですね。


産業革命を経てタイルがさらに普及したヴィクトリア朝の時代、
あたり一面タイルだらけのような装飾もなされたようでありますね。




またトイレか…と言う気もしますですが、それはともかくとして

今でもその名の知られたミントンやウェッジウッドなどが機械で大量にタイルを生産する一方で、
大量生産の画一性への反動が手仕事の再評価を促し、アーツ・アンド・クラフツ運動に繋がる。
ウィリアム・モリスのデザインした植物柄のタイルなどは大層人気があったことでしょう。



これは量産タイプの展示の一部ですけれど、

レディメイドとはいえデザインのバリエーションは豊富、
ただ余白が少ない大柄のものだけにうまく配するのは結構難しいかもしれませんですね。


…という具合にざっくりと壁面装飾の歴史を辿ってきたわけですが、
続いては博物館の2階に上がり、これでもかというほどのタイル・コレクションを
目の当たりすることになるのでありますよ。