室戸で一泊した翌朝、決していいお天気ではありませんけれど、取り敢えず雨は降っていない。
ということで、朝も早々に室戸岬へと繰り出したのでありました。
周辺にはいくつかテーマのある散策路があるようなのですが、取り敢えずは「深海ゾーン」として
「深海でゆっくりとつくられた大地を見る」ことができるとされるあたりをぶらぶらすることに。
海に向かって睨みを利かす中岡慎太郎像のところから、
中岡の見つめる方向に歩いて行きますとすぐに海に出、巨岩ごろころの世界となるのですね。
しかし、ごろごろとは言ったものの、大岩がそこにあるというよりも
そこに生えていると言った方が適当なのかもしれんなあというようすなのですよね。
この岩には「子授けの岩」てな名前が付けられていますので、特徴的なもののひとつかと。
ところで、浜辺(と言えるのかどうかですが…)には粒の荒い石が散り敷かれているよう。
黒い泥岩、灰色の砂岩、そしてサンゴそれぞれに由来する石が一面に広がっている。
これはこれで、なんとなくSF的世界でもあるような気がしてきます。
そうした不思議世界であるからこそでしょうか、
古来、ヒトはここにパワースポット的な印象を抱いたのでありましょう。
それは空海が室戸で修行し、悟りを開いたと伝わることで、
後世の人々には一層その思いが強くなったかもしれませんですね。
そこここに小石が積み上げられていたりするのを見ますと、
霊場っぽさといいますか、そんな気がしてきたりするところでありますよ。
で、先に室戸世界ジオパークセンター
に立ち寄った折にも
空海にまつわる展示があったわけですけれど、
なんとも仏教関係に疎いものとしては四国六十六カ所の霊場が空海ゆかりであったと、
実はこのたび四国に入って初めて知ったのでありましたよ。
そして、徳島から高知・室戸へと移動する中でいったい何人のお遍路さんを追い越したことか、
かくもたくさんの方々が(GWだからでもあったでしょうけれど)霊場巡りをしていたのですなあ。
その手のスピリチュアルなことを全く信じていない者には不思議に思うばかりでして。
不遜ながらスタンプラリー的な意味合いで捉えれば興味をそそられないわけでもない。
ですが、七福神巡りでさえ「信心も無いのに申し訳ない…」と思っているのでして、
そういう点からするとお遍路さんは皆、空海に信心しているのでありましょうかねえ…。
仮にそうでないとするならば、霊場を廻って真言を唱えることを是とする背景は何であるか。
個人的にはその辺が整理しにくいところだものですから。
と、ひとしきり話が脱線しましたけれど、ともかく室戸というところは
自然のパワーがダイナミックに伝わってくる場所であるとはよおく分かりました。
このはっきりした縦じま模様などは「すげえなあ」と思うばかり。
「タービダイト」と呼ばれるこのしましま地層は約1600~2800万年前に深海にあったとか。
室戸岬ではプレートの沈み込みによる影響をこうしてまざまざと目のあたりにできるだけに、
この景観を例えばメンデルスゾーンが見たらどんな曲想が湧いたでありましょうか。
先日、新日本フィルの演奏会 で「フィンガルの洞窟」を聴きましたですが、
かの洞窟のあるところというは巨大な柱状節理が見られることから伝説を生み、
メンデルスゾーンの作品も生んだということでもあるとすれば、はたして…?との
思いを巡らしてみたくなったりもするのでありました。