グランプラスにつながる路地のひとつ、
広場に抜けるちょいと手前にブリュッセル・チョコストーリーはありました。
要するにカカオとチョコレートの博物館なのですけれど、ちょいとおしゃれに「チョコ・ストーリー」。
ブルッヘにも同名の博物館がありましたですが、あれこれ見て回る中では立ち寄れずじまい。
まあ、ブリュッセルにもあるし…と積み残し課題をクリアしに覗いてみたようなわけでして。
ご存知のようにベルギーのチョコレートはたいそう有名なのであって…とは言っても、
「ゴディバ」くらいしか知りませんけれど、街なかにはチョコレート屋さんをたくさん見かけ、
しかもその店構えたるや高級ブティックの印象があるものですから、敬して近寄らず。
チョコレートそのものよりも、それに関わる歴史や背景の方に興味があるとなれば、
訪ねるのはお店でなくして、博物館ということになるのですなあ。
とまれ、チョコレート店が高級感を出しまくっている反面で、
「チョコストーリー」といささか名前はおしゃれにしているものの、
いやあなんとも地味な博物館でありましたですよ。
とまれ、以前読んだ「チョコレートの真実」や科学博物館で見た「チョコレート展」などのことも
思い出しつつ展示を見て回ることにしたわけですが、まずは原産の中南米からでありますね。
一説によれば、メキシコのヴェラクルス地方では
紀元前2000年頃にはチョコレート風味の飲み物を作るためにカカオが使われていたそうな。
その頃はチリやオールスパイスなども加えた実にスパイシーな飲み物であったとか。
ですが、そうしたレシピが尚のこと飲んだ者を元気にする、ハイにすると言ってもいいですかね。
だもんですから、カカオは珍重されて神への捧げものでもあり、
神にアクセスする飲み物の原料てなふうに捉えられたりもしたのでしょう。
これがヨーロッパに持ち込まれる元を作ったのはコロンブスですな。
そりゃあ、その地域を「発見」した人ですから。
それでも、15~16世紀に至るも現地では相変わらずスパイシー・ドリンクであったそうですが。
しかしながら、ヨーロッパの人は甘いもの好きなのですかねえ、
やはり中南米に砂糖のプランテーションも設けるとこれを合わせて
甘い飲み物に変えていくのですなあ。
今の時代、チョコレートと聞けばまずもって固形物である思うところですが、
かつてはもっぱら飲み物であって、チョコレートドリンク用のポットもあれこれ作られた。
装飾が施されたりしているのを見ても、庶民でも手が届くようになるには時間がかかったことでしょう。
大衆化はおそらく、日本ではココアのブランドとして知られる「ヴァンホーテン」に名を残す
ファン・ハウテンのチョコレート工場でココアパウダーが製造されるようになってから。
1828年のことだそうで。
ところでファン・ハウテンさんはオランダ人ということですけれど、
チョコレート・ドリンクがヨーロッパにもたらされる際の窓口はスペインであって
(中南米で手広く植民地経営していたわけですから)
その頃の(今のオランダ、ベルギーを含んで)ネーデルラントの地は
スペインの支配下にありましたら、この新奇な飲み物が入ってくるのも早かったのでは。
その一日の長が今日のベルギーのチョコレート産業の賑わいに
つながっているかもしれませんですなあ。
まあ、展示としては歴史の側面ばかりではありませんけれど、
そんなこと思いつつ見て回ったチョコレート博物館なのでありました。