コルマール旧市街
のはずれにあたるプティット・ヴェニズから
旧市街の外周をたどるように中心部へと戻る道すがら、目に付いたのがこの像です。
日本語版観光マップによれば「ラップ将官の記念碑」とありまして、
コルマール出身でナポレオン軍の司令官となったジャン・ラップを
郷土の偉人的に讃えたものでしょうか。
もっともこれが最初にお披露目されたのは1855年のパリ万博であったといいますから、
パリではナポレオン懐古的なところがあったのかもしれませんが。
ところで、ジャン・ラップはコルマール出身の英雄なのかもしれませんが、
実はもっとコルマールが自慢したい(であろう)のがこの像を造った人物の方ではなかろうかと。
コルマール出身の彫刻家フレデリク・オーギュスト・バルトルディ(1834~1904)であります。
コルマールをひと廻りする中で、メゾン・デ・テートの破風の天辺にあった樽職人の像、
ハンガリーからトカイワインを持ち帰ったと伝わるラザール・ド・シュウェンディの像、
そして帝国自由都市コルマールの守り手であったジャン・ローゼルマンの像、
これらは皆、バルトルディの作品なのですからねえ。
ウンターリンデン美術館
でひとつ忘れてましたが、
回廊部分に置かれたこの像、これもまたバルトルディの作であって、
しかもマルティン・ショーンガウアー(1448頃~1491)という同郷の大先輩芸術家の姿を
掘り出しているのですなあ。
てな具合にコルマールでは石を投げればバルトルディに当たるわけですから?
あって当然なのがバルトルディ美術館、元の生家であるそうです。
そうは言っても、彫刻家バルトルディが一般にどれほど知られているかは疑問符付きながらも、
圧倒的な知名度を誇る作品がありまして、美術館にはその習作が展示されておりました。
そうそう、アメリカ独立100周年の記念にフランスが贈った「自由の女神」像。
これの作者がバルトルディなのですなあ。
しかし、完成形に至るまではずいぶんと苦労した様子が窺えますねえ。
もちろんバルトルディの作品は「自由の女神」ばかりではないのでして、
こちらはクリストファー・コロンブス像でありますね。
コロンブスのアメリカ大陸発見400周年を記念して1893年に開催されたシカゴ万博、
それ用に大きいものを制作するための雛形かと思いますが、かなりかっちょええですなあ。
そうそう、街なかでは逆光で容貌などは全く分からなくなっていたローゼルマンの像ですが、
実際はこんなふうな顔つき、出で立ちだったようで。
と、この美術館は元来バルトルディの生家なこともあり、
住まいとしての調度なども見られました。わりと裕福ではあったのでしょうね。
ですが、変わったことするなあと思いましたのは天井の装飾を見てのこと。
あんまりこういうふうにはしないような気がしますが…。
とまれ、「自由の女神」像の作者は無名の一発屋ではなかったのだということが
よく分かったコルマールのバルトルディ推しなのでありました。