やはり勝沼の来訪者は、その目的の第一をワインに置く人が最も多いのでしょうし、
時季によっては親子連れでブドウ狩りてな目的もあろうかと思いますが、
どうやらそうしたこととは違う目的で勝沼を通り過ぎていく人たちもいるようで。
いわば「街道歩き」とでもいいましょうか、ひたすらに甲州街道を歩いていく人たち。
まあ、途中で名所旧跡に寄ったりもするのでしょうけれど、東京から歩き始めて
甲州街道であれば下諏訪で中仙道に合流するまでを歩き尽くすことを目当てとしている。
とはいえ、もちろん昔の人ではありませんから、
一泊二日とか二泊三日とかで歩ける区間を区切りながら進んでいくわけですね。
たぶん甲州街道の前には東海道を歩き尽くし、その後には奥州街道だあ!と
目論んだりするんでしょうか。
とまれ、そうした話は旧田中銀行博物館
でお茶をいただきながら、
ボランティアガイドの方に聞かせてもらったですが、「そういう人たちはね…」と続く話によると
「おにぎりでも持って歩かないと、お昼食べるところが全くないのよ、勝沼は」と。
ということで、勝沼のランチ事情の話に入ってまいりますが、予め見ておいた観光協会HPなどでも
どうも食事処は限られていて、しかも広域にぽつりぽつりと点在しているふう。
ごくごく普通の観光地のように「行ってみれば何とかなる」は全く通用しないと思った方がいいですね。
町の人たちも外食したりすることがないのか、
一応メインストリートと思しき旧甲州街道を歩いていても、およそ食事できるところは見当たらない。
先のボランティアガイドの方が言うとおり「喫茶店ひとつない」という。
当然にスタバだのタリーズだのがあるはずもなく、コンビニからして一軒もないのは
ある意味で凄いことなのではと思いましたですよ(ついでに言うと、自販機も稀)。
明治期に鉄道が通ることになった勝沼では、
町の近くに線路を通すことに大反対運動が起こったそうな。
陸蒸気から出る火の粉交じりの煙で萱葺き屋根が燃えたら大変!というのが理由(のひとつ?)。
結果的には「駅が遠くて、すっかり寂れてしまって…」と、これもボランティアガイドの方のお話。
と、やたらに「無い、無い」といい続けてしまいましたですが、
ちょこっと気軽に、町の人たちも利用する食堂みたいなのは無いものの、全く無いわけではない。
要するにワイナリー併設のレストランといったものですが、
これは決して洋食屋ではありませんね。
そもそもワインに合わせるようにフランス料理だったりして、
それなりの雰囲気、それなりの食事、それなりの値段であるところが、
地元の人の普段使いにも合わず、街道歩きの人たちの感覚にもマッチしないことから
おにぎり持参になるのでしょう。
ワインと合わせることを考えれば「なるほど」ではあるものの、
「勝沼でわざわざフランス料理?」とは個人的にも思いましたけれど、
これも「郷に入らば郷に従え」の一部なのかなと覚悟の上(とは大袈裟ですが)一軒のレストランへ。
盛田甲州ワイナリーに併設された「レストラン・シャンモリ」。
「シャンモリ」というのは同ワイナリーのブランドのようですね、シャンモリ・ワインと。
とにかくここで、雰囲気と気分とお財布と相談の上、オーダーしたのが、こちらでございます。
「山梨信玄鶏のグリル ミックスハーブサラダ仕立て キノコクリームソース」と、
料理に付けられた名前の長さがいかにもフレンチ風ではありませんか。
前日の昼にほうとう
を食するときに「ワイン豚か信玄鶏か」の二者択一で選ばなかった信玄鶏を、
ここでは頼んだですが、ワインを(ついつい通ぶって)赤にしたものの
素直に白にすれば良かったとは、後悔先に立たず。
ま、ワイン以前にキノコクリームソースもトマトソースとどちらか選べたのに失敗。
食材間の関係と好みのバランスなのでしょうけれど、
クリームソースは鶏肉のくせを引き立ててしまい、
赤ワインでは中和するより喧嘩してしまったかなと…残念。
ですが、取り放題のパン、これが焼きたてあったかでうまい。実にうまい。何度も言うけどうまい。
そして、おかわり勝手のかぼちゃのポタージュスープ、これもうまい。
スープには別の種類もありましたし、サラダも盛り放題。
となると、パンとスープとサラダをこそメインと考えれば、全くもって文句なしですなあ。
甘いもの好きの方々にはチョコレート・ファウンテンなんつうのも、
どんどん食べて状態でしたですよ。
これを勝沼らしい食事と考えるかどうかは訪ねる目的次第でしょうけれど、
これも時季によるものの、街道歩きの人たちよりも
ワイナリーを目当てにする人たちが圧倒的に多いとすれば、
むしろ勝沼らしいと考えた方が良いのかも。
個人的なところでは、それをとやかく言うこと自体、
街道歩きとワイナリー巡りとの中間みたいな目的で来ていればこそなのでしょう…。