今年2014年は作曲家リヒャルト・シュトラウス の生誕150年に当たりまして、
あちこちで(昨年のヴェルディ 、ワーグナーの周年行事ほどではないにせよ)
取り上げられる機会が多くなっているのではと思いますが、
そのリヒャルト・シュトラウスの作品の中でもよく演奏されるもののひとつに、
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」がありますですね。
14世紀の伝承として、ドイツにはティル・オイレンシュピーゲルという人物の奇行が伝えられています。
だいたいは、奉公先の親方や下働きをする教会の聖職者から言いつけられた仕事を
ティルなりにやり遂げたところが、傍から見るととんちんかんな仕事ぶりで、どやしつけられてしまう。
そして、ティルとしての報復にでるわけですが、これの多くが糞尿がらみだったりで中世という時代性を
強く感じたりもするところです。
まあ、当時は臭い部分もそのままに、ティルの行いには話を聞いた皆が腹を抱えて大笑い。
(親方連中や聖職者を笑いものにすることが庶民の憂さ晴らしにもなったのでしょう)
そこで、「道化」と見られることになったりするのでしょうけれど、
その実はロシアでいうところの「ユロージヴィ 」(聖愚者)なのかもしれませんですね。
このティル・オイレンシュピーゲルの振る舞いを音楽によって描き出したリヒャルト・シュトラウスの曲では、
最後には絞首台へと追い立てられる運命となっているわけですけれど、
ティルは実在の人物であって、流れ流れてメルンに辿り着き、
ペストに罹って亡くなり、メルンに葬られた…とも伝わっているそうな。
そんなことから、メルン はティル・オイレンシュピーゲルゆかりの地としても夙に名高いのでありますよ。
なにしろ駅前からして、ティルが町を紹介してくれています。
やっぱり姿かたちは「道化」風であるのが馴染むのでありましょうね。
シルエットでもそれと分かるようになっているのでしょう。
そんなつもりで街なかを見ていると、何ともはや実に頻繁に出没しているのですなぁ。
看板が見えにくいですが何やら「meister」とありますから、
それこそ昔々、ティルに手ひどいめにあった親方の末裔かもしれませんですね。
これは新しいそうですが、お次はまた古いのではないかと。
一か所でないところに注目です。
ここにもありますように、ティル・オイレンシュピーゲルの生没年は1300年から1350年として、
実在した人物と伝わっておるようですね。
「ティル・オイレンシュピーゲル小路」というのもあります。
で、これも登って行くとマルクト広場に戻るのでして、そこにあるお目当てというのが
ティル・オイレンシュピーゲル博物館なのでありますよ。
館内がまた、ティルだらけ。
解説がドイツ語オンリーなのがちとつらいところながら、
ティル・オイレンシュピーゲルの愛されているようすが伝わってきますですね。
子供向けの本はどのようなアレンジが加えられているのか、興味のあるところですけれど、
一休さんのとんち話くらいに知られているのかもです。
そして、これが博物館の向かい、マルクト広場にあるティルのモニュメント。
見えにくいですが、立てた左手の親指や左右のつま先部分、
記念写真を取る人が掴んでいくそうで、そこだけピカピカしてるのが人気の証し。
でもって、これは「ティルの泉」とも言われるように水が滴っておりますけれど、
これがまた「ティルのおしっこ」と言われてしまうあたり、人物像の反映かと。
飲めるそうなんですが、飲みませんでした…。
という具合に、ある意味、ティル伝承だけを観光の頼りとしているメルンの町。
ですが、歴史的には活況を呈した時期もあるようなのでして、
そのあたりをかつての市庁舎を利用したメルン博物館の展示で窺い知ることにしようかと。
ちなみにティル博物館とメルン博物館、両方の入場券になるコンビ・チケットにも
ティル登場でありましたですよ。